2024年11月16日( 土 )

厳しさを増す環境に耐えられるか(7)~タマホーム(株)

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 福岡発のパワービルダーであるタマホーム(株)は、2015年、16年と2期連続で当期赤字を計上しながらも、17年5月期では一転して増収増益で黒字転換をはたし、回復基調に入ったようにも見える。業界後発ながら急成長を遂げた同社は、これからやってくる本格的な市場縮小の波を乗り越えていくことができるだろうか。

食うか食われるかの時代へ

 17年7月、同社は16年5月期を初年度とする3カ年中期経営計画「タマステップ2018」の最終年度となる18年5月期の目標数値修正を発表した。当初計画では1万を超える販売棟数で売上高が2,000億円超、ROEは15%を予定していた。それを販売棟数8,359棟、売上高1,702憶円、ROEは10.5%へと下方修正した。理由として、注文住宅事業の強化と戸建分譲事業を中心とした不動産事業の拡大を目指したが、東京オリンピックの建築需要による職人不足の顕在化から住宅業界に影響が出ていること、多様化する顧客の住宅ニーズへ対応した商品投入が遅れたことで、計画よりも引渡し棟数が減少することなどを上げている。

 前述したように、今後の住宅市場予測は厳しいものだ。16年の持ち直しも投資用貸家が増加したに過ぎず、人口減少に併せて住宅市場は縮小していく。生き残っていくためには、住宅市場で安定的なシェアを確保するか、異業種で新規事業を育てる必要がある。タマホームもさまざまな異業種での取り組みを行ってきたが、住宅・不動産事業が売上構成の95%を占めるようでは、新規事業が育っているとは言えない。また業界内の争いでは、積水ハウス、大和ハウス工業というガリバーを相手にするには規模感が違い過ぎる。大和ハウス工業とは時価総額で100倍以上の差だ。

 ガリバー2社以外のライバルも強力だ。高い収益力や多角化、強固な財務体質などタマホームにはない武器も持っている。今回の連載で取り上げた住宅業者以外にもライバルは多く、そのなかで生き残っていくのは容易ではないだろう。ローコスト住宅を強みにした地方業者と業界ガリバー企業との狭間で、すでに同社の特徴は失われつつある印象もある。
 市場が縮小過程に入れば、業界再編が進むことになる。限られたパイを、今あるすべての会社で分け合うことは不可能だからだ。今後、業界大手の選択肢の1つにタマホーム買収が浮上してくる可能性はあるだろう。ライバルと不毛な価格競争を続けるくらいなら、いっそのこと買収してしまうほうが、シェアをもつ会社にとっては有利だからだ。まさに強者の論理だが、これがさまざまな業界で進んでいる現実でもある。「食うか食われるか」の時代を生き抜くための策が、同社には残されているのだろうか。

(了)
【緒方 克美】

 
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