重慶市と福岡市「2つの故郷」を結ぶ夢を実現したい(後)
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中国大明火鍋城 朱 大明 代表取締役社長
食は四川にあり。日本国内においては、「食の鉄人」陳健一氏の父、陳健民氏が四川料理を初めて紹介したとされる。激辛ブームで知名度を高めた担々麺や、すでに家庭料理としてレギュラーの座を獲得した麻婆豆腐や回鍋肉(ホイコーロー)など、四川料理は代表的な中華料理として日本人の舌を楽しませ続けている。福岡市における四川料理の第一人者・朱大明氏は食を文化ととらえ、「本物の味」を普及することに力を注いできた。いまは日中友好交流事業の実現に夢を馳せる朱氏に、これまでの歩みを聞いた。(通訳:假屋一恵さん)
青年期を過ごした文革時代
朱大明氏は、中華人民共和国(中国)建国の3年前(1946年)に生まれた。毛沢東率いる中国共産党と国民党が争っていた時期のことも、ぼんやりとだが覚えているという。66年に始まった文化大革命のころに、20歳代の青年期を迎えた。朱青年は文学を志す情熱的なロマンチストだったが、大学に入学する条件が不足し、さらに大学自体が混乱していたことから、「勉強は、誰にも頼らず自分自身でやるしかない」と決意したという。
重慶で工場労働者になったのを振り出しに、次は工場に併設された技術学校の教師になった。さらにラジオ局の編成部門で記者生活を送った後に音楽出版会社で音楽カセットテープ制作の仕事に就き、同社の社長にまで昇りつめた。その後は、朱氏いわく「どこにでも、追い落とそうとする人はいる」ために、職を辞して、香港にほど近い広東州深圳市で87年ごろにレストラン事業をスタートさせた。
文化、交流事業への夢を語る
中国でのレストラン事業が軌道に乗り始めたころ、アメリカやフランス、そして日本から開業の誘いを受けるようになった。当時の総領事が友人だった縁で福岡を訪れたのは93年で、同年中には第1号店をオープンさせた。それ以降、閉店した店舗もあるものの平均すると2年に1店舗のペースで拡大を続けてきた。
全7店舗を合計した1日の来客数は約1,500名。店舗によって違いはあるが、客単価は担々麺中心の店舗で約1,800円、火鍋城の夕食時は約3,000円まで伸びるという。年商はここ数年、3億円から4億円で推移している。北京に本部を置く、世界中国料理協会の理事を務めているため世界展開の誘いは引きも切らないが、現段階でその計画はなく、しばらくは1店舗ごとの味を維持することに力を注ぎたいと話す。朱氏のもう1つの顔は、熱心な中日友好推進家だ。「中国と日本は、まだお互いのことをよく知らない」と嘆き、「もっと理解し合うために、まずメディア関係者に知ってもらうことが大事」と、在福の記者団を故郷の重慶に招き、地元のメディア関係者と交流させることを計画している。
「これから、演劇の脚本を書きたいし、小説も書いてみたい」と語る朱「大人」の顔が輝く。言葉もおぼつかない異国で成功したビジネスマンの顔から、大陸で激動の時代を生き抜いた、小脇に本を抱えた朱青年のそれに戻ったように見えた。青春を取り戻すのはこれからだ。(了)
<INFORMATION>
中国大明火鍋城 本店
所在地:福岡市早良区百道1-5-1
TEL:092-846-2116
URL:http://www.daming.jp関連キーワード
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