トランプ政権下でいよいよ本格化した官僚機構の反乱(4)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦
2017年12月11日何よりもネオコンにとって許せないのはロシアが非民主的国家であるということだ。ネオコンは欧米型の自由民主主義社会が最高の体制であり、それは国外にも福音として広げなければならないというミッションというか、使命感を持っている。
「余計なお世話」とロシアや中国は言うだろう。民主化のための戦争では、若いアメリカ兵がとても民主化できそうもない中東やアフガニスタンで無駄死にしている。そんなわけで、クリントン、ブッシュ、オバマのかたちを変えた中東民主化政策に反旗を翻したトランプは、その意味で左翼ハト派からも評価されていた。
ただ、トランプ政権の安全保障政策の問題は、ネオコンのような軍事介入を避けるという点では評価できるものの、トランプ自身がそうであるように、保守派シオニストであることだ。支持母体にはゴリゴリのシオニストであるカジノ王のシェルドン・アデルソンやAIPACといったイスラエル・ロビーの存在がある。また、草の根の保守層の福音派キリスト教原理主義(エヴァンジェリカル)といった存在は、イスラエルの敵であるパレスチナ武装勢力ハマスだけではなく、同じくイスラエルの敵である、中東のかつての大帝国ペルシャの末裔にあたるイランを敵視する。イランが、イスラエルの隣国レバノンで活動する反イスラエルの武装組織であるヒズボラを支援して勢力を拡大していることを問題視しているわけだ。
そんなネオコン派、福音派、シオニストを中心とする外交タカ派は、クリントン政権のときも、ブッシュ政権のときも、最初は鳴りを潜めて中道派の政権運営を眺めていたが、政権発足後しばらくすると、国内外で起こったテロ事件をきっかけに水面下から浮上し、外交をハイジャックしてきた。ブッシュ政権で、PNAC(アメリカの新世紀のためのプロジェクト)という集団が、911事件後のブッシュ政権の軍事強硬化を主導したことを覚えている人もいるかもしれない。
トランプ政権でティラーソン国務長官を追い出したい勢力は、この勢力の残党である。ティラーソンの後任として名前が上がっている、女性のニッキー・ヘイリー国連大使もマイク・ポンペオCIA長官もトランプ政権のなかでは珍しかったネオコン派である。そして、ポンペオが仮に国務長官に横滑りした場合に、後任のCIA長官になるかもしれないとメディアがもてはやしているのが、トム・コットン上院議員(アーカンソー州)である。彼はもともとリベラル気風のハーヴァード大学で保守派として通した男で、学内新聞の編集などをしていたが、2001年のテロ事件の後は、率先して従軍している。06年に保守系のブログに投稿した内容を、ネオコン派の最大論客である『ウィークリー・スタンダード』の発行人である、ビル・クリストルというシオニストのネオコンに評価されて、それ以来、クリストルの薫陶を受けていた。
クリストルは、もちろん大統領選挙のときは徹底的な反トランプで、ネオコンの政策を理解する保守派知識人のヒラリー応援団長だった。だから、私はコットンがトランプを率先して支持したのはおかしいな、と思ったものだ。彼がヒラリーの旦那のビルの地元であるアーカンソー出身だからといっても、だ。ただ、コットンはクリストルが内部からトランプ政権に食い込もうとして送り込んだスパイだとすれば、納得できる。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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