日本のネトウヨを手玉に取るバノン前米主席戦略官(後)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦
(2017年12月18日)もともとの意味の「アメリカ・ファースト」というのはこういう意味である。
「アメリカは世界のアメリカの国益に関係ない紛争に関与するのではなく、国境をしっかり守り、国内の経済の立て直しなど国内問題を優先せよ」
最初に「アメリカ・ファースト」という主張をしたのは、日本でも有名な飛行機乗りのチャールズ・リンドバーグだ。1940年代にナチス・ドイツが欧州大陸を席巻していたときに、欧州やイギリス側の救援要請に対して、欧州の内戦には介入しないという主張を展開した政治勢力だ。これだけであれば、平和的なハト派のように見えるが、実際には「アメリカ・ファースト」派は、ナチス・ドイツを反共産主義の勢力として育てるために、アメリカの財界が後ろ盾になって物的な支援をしていた裏の顔がある。フォード、ロックフェラーといった主流派の財界勢力が関与していたのだから財界ぐるみである。こういった勢力がヒットラーを途中まで育てていた。(URL)
アメリカの小説家のフィリップ・ロスは、アメリカ・ファースト派がリンドバーグを大統領候補に担ぎ上げるというシナリオの架空小説を書いている。こういう事実は日本人はあまり知らない。もっといえば、ソビエト共産主義を生み出したボリシェヴィキ革命も当初はウォール街が支援していた。こういう話も保守派のなかでは密かに知られている事実だ。
今の「アメリカ・ファースト」派も単純なハト派ではない。ネオコン派のように何でもかんでもアメリカの民主主義を押し広めようということではないが、彼らはアメリカの製造業や軍需産業と結びついており、アメリカは対外的な戦争には関与しないが、外国に武器や弾薬をどんどん売ろうという考えを持っている。(URL)
そういう考えで見ていくと、今回、バノンがやってきて、日本の反中・北朝鮮の傾向をもつネット右翼たちの前で、安倍首相が日本に愛国主義を復活させようとしていることを賞賛した意図も見えてくる。要するに、「アメリカの武器をもっと買ってくれ。アメリカは日本が中国を封じ込めることの前面にたつことを応援する」ということだ。安倍政権のタカ派の佐藤正久外務副大臣にとっては心強い援軍だろう。軍事予算が確保できる。
アメリカが極東から一歩引いてグアムに移転する場合、日米同盟がそのままの場合には、日本が対中国封じ込めの最前線になる。ミサイル防衛を日本にたくさん売りつけることは、アメリカの製造業のビジネスにもなるし、アメリカのコントロールで日本を対中国封じ込めの尖兵にも利用できるわけだ。ミサイル防衛というのは日米が高度なデータリンクで結びついているからこそ効力をもつともいわれる。日本という尖兵を利用しつつ、敵基地攻撃能力を保有させる。日本が防ぎきれない時だけ、アメリカが出ていく。これが「オフショア・バランシング」の考え方で、アメリカの保守派では少し前から主流になりつつある。
だから、アメリカ・ファーストの勢力がアメリカで主流になるとしても、彼らが日本の真の友人になるとは限らない。変なふうに日本のネット右翼を焚き付けて商売の種にしようとする可能性もある。この点はくれぐれも警戒しておく必要がある。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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