日本全国を騒がせた金塊事件 福岡が「金の一大市場」となったワケ(前)
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2017年を通して、福岡のみならず、日本全国を騒がせた事件というと、金塊に絡む事件だろう。それは博多駅で金塊7億6,000万円分(報道当時は6億円)が強奪された事件をスクープした西日本新聞が新聞協会賞を受賞したこともからもよくわかる。これらの事件は、密輸や強奪といった従来型の犯罪ではあるが、それだけにとどまらず、新しい側面を見せた犯罪でもあった。そのことは後述するとして、まずは、今年、福岡で起きた一連の事件をざっと振り返る。
金塊絡みの事件が多発
一連の事件が始めて報じられたのは昨年12月半ば。15年の夏、JR博多駅周辺の路上で金の取引業者らが貴金属店に売却する目的で7億6,000万円相当の金塊160キロを運んでいたところ、警察官を装った男らに「警察だ」「密輸品ではないか」などと声をかけられ、業者らが目を離したすきに車で強奪されたという事件だった。
白昼堂々、ニセ警察官が金塊を奪ったとして、現代の3億円事件とワイドショーや週刊誌にも取り上げられた。
その後、押収物などから犯人が特定されつつあった17年4月末、またもや金塊に絡む事件が発生した。東京の貴金属業者が金塊を買い付けるために銀行から引き出した3億8,000万円を複数の男らに強奪されたというものだった。これも白昼堂々、福岡都市部のど真ん中である天神で起きた。
福岡県警は主要な道路や交通機関に警察官を緊急配備。すると福岡空港国際線ターミナルで7億3,500万円もの大金を無許可で香港に持ち出そうとしていた韓国人の男らを発見し、逮捕。一時は、天神で現金を強奪した犯人との関連性が疑われたが、銀行の帯封や検出された指紋などが異なることからまったくの別人とわかった。しかし、韓国人らの供述に曖昧なことが多く、多額の現金を所持している合理的な理由が見つからないことから入念に捜査したところ、金塊の密輸に関連していたことがわかった。
このほか、福岡ではないが、佐賀県唐津市の漁港で、東シナ海上で中国船から206キロの金塊を受け取って密輸したとして日本人と中国人8人が逮捕された事件もあった。消費増税を機に急増
なぜ、こうも金塊に絡む事件が多発するのか。1つの理由は、金を売買するときの特別なルールだ。
業者が金を買取る場合、買取金額に消費税8%分を上乗せして買ってくれるのだ。消費税のかからない国で金を購入しても税関を通せば8%の消費税を払わなければならないが、密輸して業者に売れば、上乗せされた消費税分の8%がまるまる懐に入るというわけだ。
実は、これを利用した密輸は以前からあった。しかし、8%の消費増税をきっかけに急激に増え始めたのだ。
財務省によると、2010年から13年の4年間で摘発された金の密輸は合計わずか39件だが、消費税が8%に上がった14年は一気に増えて177件。15年は294件にも上っている。(つづく)
【萩尾 時一郎】法人名
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