日本全国を騒がせた金塊事件 福岡が「金の一大市場」となったワケ(後)
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2017年を通して、福岡のみならず、日本全国を騒がせた事件というと、金塊に絡む事件だろう。それは博多駅で金塊7億6,000万円分(報道当時は6億円)が強奪された事件をスクープした西日本新聞が新聞協会賞を受賞したこともからもよくわかる。これらの事件は、密輸や強奪といった従来からある犯罪ではあるが、それだけにとどまらず、新しい側面を見せた犯罪でもあった。そのことは後述するとして、まずは、今年、福岡で起きた一連の事件をざっと振り返る。
金地金価格高騰も一因に
金の価値が上がっているのも要因の1つだろう。05年から16年までの金1gの平均価格は実に2.7倍にも上っている。そのため、同じ儲けを生む場合、密輸する荷物を約3分の1に減らせるというわけだ。
たとえば100万円分の金は現在の相場で約200g程度。100gのインゴット2枚分の大きさは、ざっくりいうとスマートフォンの半分ほどだ。たったその程度の金をこっそり持ち込んで売れば消費税分8万円の儲けになるのだ。そのため、小遣い稼ぎの感覚で、普通のサラリーマンや老夫婦までが金の密輸に手を染めるケースが増えているという。そして、金の密輸が増える最も大きな要因がローリスクという点だ。仮に金の密輸が摘発されても消費税と罰金さえ払えば、金は本人に返還されるのだ。
もちろん必ずというわけではない。密輸した金塊が大量だったり、犯行が悪質だったりした場合は没収されるが、そういうケースは15年(事務年度)で見ればわずか3%に過ぎない。
非合法ビジネスではあるが、麻薬などと違って金取引という合法の部分が混在しているため、罪の意識がどうしても低くなってしまう。ある意味、消費税増税が生んだ新しいタイプの犯罪なのかもしれない。福岡は格好のターゲット
ただ、少量の金はさておき、大量の金塊をどうやって日本国内に密輸するのか。日本に密輸される金の多くは、香港―韓国―日本というルートを通る。
香港は世界の4大金市場の1つで、金の輸出の規制がほとんどない。消費税もかからないため、世界中のバイヤーが買い付けに来る場所だ。
金は香港から韓国の仁川国際空港に持ち込まれる。そのトランジットエリアで、すでに出国手続きを済ませた運び屋に渡され、日本にやってくるというわけだ。出国時に韓国当局から注意情報が寄せられないため、日本の入国審査も甘くなるのだ。しかし、日本への渡航経費がかかりすぎては儲けが少なくなる。そこで低コストで交通の便利な福岡やその近県に集中するというわけだ。それに加えて福岡空港からの入国者数は増加しており昨年は163万人と、10年の48万人に比べて3.4倍にも上っている。検査にあたる職員の慢性的な不足も密輸犯につけいるスキを与えているのかもしれない。これらの条件が重なり合って、今や福岡は日本でも金の一大市場になっているという。
金の取引は現金で行うのが一般的だ。大きな取引があれば事前に多額の現金を用意する必要があり、業者が全国から集まる福岡には取引情報が溢れている。つまり悪事を働く者にとって福岡は格好のターゲットなのだ。
金密輸の急増によって国も関税法の厳罰化へと動き始め、入国検査にも金属探知機の導入を決めたが、はたしてどれほどの効果があるのだろうか。(了)
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