波乱模様の経済界(1)~携帯電話業界 楽天が第4の携帯会社に、その勝算は?(後)
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IT大手の楽天が携帯電話事業に参入する。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクグループの大手3社に対抗する第4勢力となる。3社の寡占で高いとされる通信料料金が値下げで下がる可能性がある。日本の携帯市場は新たな局面に入る。楽天に勝算はあるか?
好機を逃し、5年の遅れを取る
2012年、ソフトバンクによるイー・モバイル買収。この節目の時に、楽天がイー・モバイルを買収していれば、第4の携帯電話会社としてソフトバンクと張り合うことができた。いま、6,000億円を投じて携帯会社をつくるぐらいなら、あの時、3,600億円でイー・アクセスを買収しておけば、よかったのではないか。
楽天モバイルの目標は1,500万件。5年の遅れによって、楽天は携帯大手3社に太刀打ちできないことは明白だ。
携帯電話進出は米アマゾンへの対抗策だ
楽天の三木谷浩史会長兼社長は、1周遅れの今になって、携帯電話への参入を決断したのか。理由ははっきりしている。米アマゾンへの対抗策だ。楽天はインターネットサービスと金融サービスが経営の2本柱。インターネットサービスの主力が、創業事業であるネット通販の「楽天市場」だ。ところが、楽天市場が、米アマゾン・ドット・コムに完敗を喫したのだ。
日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた「ジェトロ世界貿易投資報告」(2017年版)によると、2016年の日本のEC(電子商取引)市場における企業別のシェアはアマゾン(アマゾン・ドット・コム)が20.2%でトップだ。2位の楽天(楽天市場)は僅差の20.1%。3位はヤフー(ヤフーショッピング)の8.9%だった。
アマゾンは先進諸国でシェアトップになった。米国は33.0%、英国は26.5%、ドイツは40.8%、フランスは10.7%でいずれもトップ。中国はアリババ集団が43.5%で断トツだ。
日本は長らく楽天をアマゾンが追う展開だったが、アマゾンが楽天を追い抜き、トップに立った。日本に上陸したアマゾンは、採算を度外視した手法でライバル社を蹴散らして駆け上がってきた。
直販型は商品仕入れコストはかかるが、自社の方針通りに運営できる。直接の取引先はエンドユーザーだ。これに対して、モール型は商品の仕入れコストはかからないが、あくまで商品の販売は出店社が行うので、自社の思う通りにやれない。直接の取引先は出店社だ。直販型のアマゾンとモール型の楽天。ビジネスモデルの違いが、両社の明暗を分けた。
楽天のアマゾンにない強みは、楽天市場や楽天トラベルなどのECから楽天カードなどの金融までの幅広いサービスを楽天ポイントでひもを付け、利用者を囲い込む「楽天経済圏」だ。携帯電話進出は、ポイント拡大を狙ったアマゾン対抗策の一環である。アマゾンに追い込まれてからの第4の携帯電話会社参入には、楽天の三木谷浩史会長兼社長の焦りが透けて見える。
(つづく)
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