波乱模様の経済界(3)~生鮮宅配界 どう迎え撃つ アマゾンの生鮮宅配(後)
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アマゾンジャパンが生鮮食品のネット通販に参入した。同社の背中を押したのは、ネット通販の急増と人手不足による宅配クライシス(危機)である。宅配会社に頼らない自前の配達網の構築に経営の舵を切った。その一環として生鮮宅配に進出した。ニッポンの流通業者もアマゾンに対抗して生鮮宅配に参入。かくして生鮮宅配戦争が勃発した。
アマゾンとヤマト運輸は取引解消へ
驚異的なスピードで成長してきたネット通販の巨人、アマゾンだが、その物流はもろさを露呈した。アマゾンが扱う商品は日本市場だけで2億品目といわれるが、それを運ぶ人間が圧倒的に不足しているのだ。物流の崩壊が、アマゾンを直撃した。
元々、アマゾンの配送は佐川急便が一手に引き受けていたが、運賃が低く、採算割れだったため、佐川急便はアマゾンに値上げを申し入れる。ところが、交渉は決裂し、2013年に佐川急便は配送から完全撤退した。
代わって、ヤマト運輸と日本郵便がアマゾンの配送を引き受けた。宅配便はネット通販の拡大で荷物の増加が続く一方、ドライバーは不足しており、サービスの維持が困難になった。宅配クライシス(危機)である。
宅配便最大手のヤマト運輸は2017年10月1日、個人向けの運賃を平均で15%値上げした。運賃の全面改定は実に27年ぶりだ。割引運賃が適用されている大口顧客1000社とも値上げ交渉を行ってきた。
焦点は最大顧客であるアマゾン向けの運賃だ。アマゾンはヤマトの宅配便取扱個数の1~2割を占めるとされる。「1個あたり平均280円前後という水準を400円強へ約4割引き上げる」(日本経済新聞電子版17年9月28日付)と報じられた。4割の値上げをアマゾンが呑むわけがない。ヤマトは、アマゾンに取引を撤退すると最後通牒を突き付けたということだ。
アマゾンは独自の配送網を築く
ヤマト運輸との取引の解消に備え、アマゾンは独自の配送網を構築することになった。アマゾン全国配送を担当するヤマト運輸や日本郵便などの宅配大手以外にも「デリバリープロバイダ」と呼ぶ中小の運送会社に地域限定で配達を任せていた。
アマゾンが東京都の都心部でパートナーを組むのが丸和運輸機関(埼玉県吉川市、東証一部上場)。アマゾンの当日配送を担い、20年度までに軽貨物車1万台、運転手1万人体制を築く。18年3月期の売上高は前期比7%増の720億円、純利益は4%増の32億円を見込む。
アマゾンの方針と軌を一にして急成長するのが、17年3月に東証マザーズに上場したファイズ(大阪市)という物流会社だ。物流拠点でのオペレーションから宅配まで幅広く業務を委託し、注文から1時間以内に商品を届けるアマゾンのプライムナウの担い手の1社。18年3月期の売上高は前期比30%増の68億円、純利益は25%増の2.5億円を見込んでいる。
アマゾンは委託先を急速に広げた。神奈川県では地域限定の委託先を1年前の倍の8社に増やし、配達網を維持する。ヤマト運輸の当日配送の撤退を埋めるためだ。
宅配クライシスをきっかけに、アマゾンは自社配達網の構築に動いた。都市部にとどまらず、全国に広げる。アマゾンはネット通販会社というより、巨大な物流会社に転換しているといえる。これはネット通販企業による自社配送網拡充のきっかけになるだろう。ネット通販会社は自前の配達網の構築に動く。当日配達を担う地域の運送会社との提携が進む。地域の中小運送会社にはビジネスチャンスが広がる。このチャンスを逃がすなかれ!
(つづく)
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