2024年11月05日( 火 )

骨髄ドナー支援を拡大させた政党地方組織の力(後)~民進党・田辺一城福岡県議

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政党の価値の証明

 民進党全国青年委員会事務局長を務める田辺一城福岡県議は、「日比プラン(骨髄ドナー登録推進プラン)」が生まれ、拡大した背景を次のように語る。プランの土台になったのは、名古屋市議・日比健太郎氏が民進党青年委員会宛てに送ったビデオメッセージだ。16年5月中旬ころに急性白血病と診断された日比氏は、同年11月3日夜、名古屋市内の病院で亡くなった。享年36歳。骨髄ドナーの適合者は4名いたが、移植に至らなかった。

 日本では、骨髄移植の適合者が見つかっても実際に移植まで至らないケースは珍しくない。(公財)骨髄バンクのデータによると、2016年における登録者数2,245名のうち2,164(96.4%)が骨髄ドナーの適合者が見つかっている。しかし、移植実施数は1,228件と登録者の6割を下回る。日比氏は自身の闘病生活のなかで、現状における課題を調べ、休業補償などドナーへの支援が不足していることに気づいた。

 実際の移植までの流れは、骨髄提供の場合、骨髄採取から28~48日前に健康診断、7~21日前に採血、1~2日前に入院(平均3泊4日)というもの。また、骨髄バンクに登録できる18~54歳は、働き盛りの労働世代。骨髄移植に際しては多くのドナーが休業を余儀なくされる。「休みを取りにくい」という状況が、適合しても移植まで進まない問題の背景にあるという。

田辺 一城 県議

 仲間に志を託す日比氏のビデオメッセージは同氏が亡くなる1週間前に届けられた。「休業の課題を解決するため、国に意見書を提出するだけでなく、それぞれの地方自治体で休業をカバーする政策・制度を一気に作っていこうと取り組んだ」(田辺氏)。全国の若手地方議員500名の青年委員会メンバーが動いた。その結果、約10カ月で約120の自治体において、骨髄ドナーに対して最大7日間1日2万円を助成する制度が設けられたのである。

 「誰がいつ急性白血病になるかはわからない。移植率を高めるための政策は、国民1人ひとりを守るための政策」(田辺氏)。各都道府県別の移植希望者は毎年平均約29名(国内のみ)。すべてにおいて最大14万円を支給しても平均約400万円。自治体の予算規模(福岡県は約1.7兆円)を考えると、この支援制度による財政負担が重いとは考えにくい。田辺氏は引き続き、県議として、県における支援制度の創設に取り組むという。

 日比氏の志を受け継いだ民進党全国青年委員会500名の取り組みは、マニフェスト大賞で「地方政治における政党の価値、国民にとっての政党の価値を別の側面からしっかりと示した」と評価された。「政党は国政のためだけにあるものではない」と有権者に訴える田辺氏。民主党時代から時間をかけて築かれてきた政党組織の力とは何か。その本質を見誤り、その場しのぎの糾合に走れば、一朝一夕では成らない貴重な財産を失うことになるだろう。

(了)
【山下 康太】

 
(前)

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