2024年11月25日( 月 )

訪日韓国人急増の背景(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 「近くて遠い国」という表現を聞いたことがあるだろうか。韓国で一時期日本を形容するフレーズとして良く使われていたものである。ところが、最近はこのような表現ももう古い表現になりつつある。

 昨年8月の日本観光庁の発表によると、夏季休暇シーズンである7月に日本を訪問した韓国人は64万4,000名に上ったという。昨年日本を訪問した韓国人の数は、初めて500万人を上回ったが、今年になっても、その増加トレンドはとどまらず、増え続けている模様だ。7月の訪日韓国人64万4,000名という数字は、単月としては最高記録で、前年同月に比べると、44.1%という大幅な増加である。2017年1月~7月の訪日韓国人の累計は403万9,900名で、前年同期比42.8%増となった。

 現在の日韓関係は、慰安婦問題などでいつになく冷え込んでいる。また韓国を訪問する日本人も減少している。このような状況のなかで、なぜ韓国人は日本に押し寄せているのだろうか。

 韓国の人口は5,000万人ほどなので、訪日韓国人年間500万人というのは、実に韓国人の10人に1人が日本を訪問していることになる。もちろん私のように年に十回以上日本を訪問していることも、それにカウントされるので、厳密な意味では10人に1人とはならないが、それでも大きな数字であることには間違いない。

 なぜこのような現象が起きているのか、筆者にとってとても興味深い。今回は韓国人の立場から、両国の関係が悪化しているにも関わらず、なぜ訪日韓国人が急増しているのかについて私なりに考えられる理由を上げてみたい。

 統計を見ると、訪日韓国人の全体の5割以上は20代~30代が占めているという。それに、訪問期間も週末を利用した3日間以下が多い。

 韓国で海外旅行が自由化されたのは、1989年1月である。88年のソウルオリンピックを境に、経済成長に自信をつけた韓国は、やっと海外旅行も自由化したのだ。それ以前は海外に旅行したくても、自由に旅行できない規制があったのだ。

 日本で長年住んでいて、十数年ぶりに韓国に帰った筆者は、ソウル近郊の衛星都市に行くたびに、韓国の経済発展に驚かされた。日本ほどではないが、韓国も地方都市に行くと、ビルが立ち並ぶ繁華街があちこちに存在する。以前では見られなかった光景である。韓国経済の厚みが増してきたという証拠である。それは数字として現れていて、韓国の国民1人あたりの所得は、3万ドルを目前に控えている。海外旅行が急増する大きな理由として、このような所得の増加と、インターネットの発達によって情報量が増えたことが一番大きいのではないかと思っている。そのような状況のなかで、海外旅行先として日本が選ばれる第一の理由は、やはり日本は地理的に韓国に近いからであろう。

(つづく)

 

(後)

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