業界の「匠」座談会 それぞれの道とは(前)
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博多人形師の第一人者、中村信喬氏。世界に日本庭園のすばらしさを広めている(株)別府梢風園の社長、別府壽信氏。明治時代から115年続く(株)未来図建設の社長、菅原正道氏。そして数々のテレビ報道番組を手がけ、NetIB-Newsの動画コンテンツの製作にも携わる(株)TMエンタープライズの社長、杉本尚丈氏を加えた、それぞれの業界の「匠」による座談会が1月17日夜、福岡市内の飲食店で行なわれた。
(進行:データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
4人はそれぞれ青年会議所やライオンズクラブといった福岡の経済団体などで親交がある間柄。座談会は会食の席で、終始和やかなムードでおこなわれた。
中村 桜坂の自宅を今改装しているところで、未来図建設さんに依頼しています。そこに人が集まれる場所をつくって、博多の将来のまちづくりを考える人たちを集めたサロンを開こうと考えています。先日、金沢に行ったのですが、古い町並みがそのまま残っていて、とても風流でした。それに比べると、博多のまちは、古いものがどんどん衰退していって……。何とかしないといけないと考えています。最低限博多祇園山笠が通る道ぐらいは、電線を埋設するぐらいの工事が必要だと思います。
児玉 金沢は古い街並みを歩いていると、まわりの店がきちんと観光客を楽しませていますよね。店の中に入るのにもきちんと金をとって商売をしているけど、それにまったく嫌味がない。
中村 山笠はどんどんスピードを競っているけど、山車の高さや華やかさを競うようにしたいです。そのために電線を埋設してほしい。そうすれば、スピードを競わなくなるし、事故も起こらない。山笠の人形づくりも盛り上がってくるし。先日、大学の芸術学部で教えることがようやく終わったのですけど、就職先を紹介してくれと言われ、あぜんとしましたよ。芸術というものに、就職先をあてがうという考え自体が間違いだろうと。とはいえ、博多人形師の業界は食べていけない人がほとんどです。
一同 そういえば、昔に比べると最近は、贈答品として、博多人形を送ることがめっきり少なくなってきましたよね。博多人形をもらったら、家に飾るけどね。
中村 「収入が少ない」と、若い博多人形師のなり手も少なくなってきています。
菅原 建設業界も若い職人さんが少なくなってきています。危険な仕事をする人が少なくなってきているようです。造園業界も危険な仕事ですよね。
別府 高いところに登るような仕事なので危険な仕事ですね。昔は勉強ができなくて、体力は十分にあるという若者が危険な仕事に就くことが多かったけど、今はそういう機会が少なくなってきていますね。そういう危険な仕事は収入が高くなる仕組みにならないと難しいと思います。
中村 人形師の業界も自治体の補助金頼みから抜け出さないといけない。高度経済成長期に、ものがなんでも売れたものだから、あまり腕の良くない人形師がたくさん出てきてしまった。その人たちから学んでいる若い人たちの腕が良くない。
最近は現代アートも凋落気味。よくわからないものを組み合わせて、アートとか言っている人たちの「化けの皮」がはがれてきています。なので、日本古来の漆とか人形づくりとか、そういうものが見直されてきていると思います。見直されるきっかけとなっているのは外国人です。一同 日本古来の芸術の良さを評価するのは外国人ですよね。日本人じゃないというのが悲しいけど。
(つづく)
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