2024年11月23日( 土 )

波乱模様の経済界(5)~民泊業界 ヤミ民泊横行で自治体が悲鳴(後)

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 2017年の訪日外国人(インバウンド)数は、前年比19.3%増の2,869万人となり、5年連続で過去最高を更新した。政府は東京オリンピックの2020年に4,000万人、30年には6,000万人にする目標を掲げる。だが、絶対的に不足しているのが宿泊施設。今年6月には、一般住宅に有料で客を泊める住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される。企業の民泊事業への参入が相次ぎ、大乱戦模様を呈している。

国内初の民泊サイトを運営する百戦錬磨

 百戦錬磨は、民泊のフロントランナーだ。代表取締役社長の上山康博氏はソーシャルゲームKLabの出身。取締役事業本部長を経て、07年9月、楽天トラベル執行役員(新規事業担当)に就任。同社を退職、12年6月百戦錬磨を設立、社長に就任した。

 風変わりな社名は、同社のホームページによると、「百戦錬磨の人間が集まった会社の意味でなく、自らの仮説を実証するために百戦しようという会社」だとしている。情報通信技術を活用して、旅行需要・交流人口の拡大を目指している。

 同社は旅館業法の規制対象外の農家での宿泊を仲介する事業で実績がある。民泊事業を展開するグループ会社の「とまれる」(東京都千代田区)は15年12月、国家戦略特区で認定される日本初の民泊向けの仲介サイト「STAY JAPAN」を開設した。

 大田区の住宅の物件登録を受付け、民泊に必要な申請業務などを請け負う。複数のチェックカウンターをつくり、鍵の受け渡しや対面での本人確認を代行する。

 訪日外国人旅行者に対応した民泊仲介サービスが評価され、16年4月、クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)が3億円を出資。京王電鉄も出資しており、現在の資本金は7億8,400万円だ。
観光庁と厚生労働省が開催する民泊サービスのルールづくりについて議論する「民泊サービスのあり方に関する検討会」は、百戦錬磨の社長上山康博氏からヒアリングした。民泊新法が成立し、今年6月から施行される運びとなった。

自治体は民泊規制に動く

 外国人観光客に民泊の人気は高い。割安料金で観光地に泊まりたい。そんな外国人観光客にとって民泊施設は恰好の宿泊施設である。しかし、民泊は6月の全面解禁を前に、マイナスイメージが定着した。無許可の違法施設(ヤミ民泊)が横行しているからだ。

 日本最大の観光地・京都市は、ヤミ民泊に頭を悩ましている。

〈市内に5000施設あると推計される民泊物件のうち、約9割が無許可のヤミ民泊とされる。そして高まるインバウンド(訪日外国人客)人気で過去最高を記録した京都市の昨年(引用者注・2016年)の宿泊客数1,415万人(実数)のうち、修学旅行客とほぼ並ぶ110万人がヤミ民泊を利用したと推計され、ホテルや旅館など既存の宿泊施設を圧迫している。〉(ダイヤモンド・オンライン17年9月5日付)

 ヤミ民泊の数と比例して、住民トラブルも増加した。民泊利用者の騒音やゴミだし、タバコのポイ捨てといったマナーの問題だ。京都市はヤミ民泊対策として、1泊200~1,000円の宿泊税を、18年10月をメドに導入する。マンションでの民泊原則禁止の実現を図ろうとしている。

<民泊の上乗せ規制はほかの自治体まで広がっている。新宿区や中野区は住宅地で月曜から木曜までの宿泊を禁じる方針だ。世田谷区はよりやや緩いとはいえ、民泊の利用実態と合わない点は同じだ。大田区は住宅地と工業地などで、民泊そのものを禁じる方向で検討している。>(日経電子版オリパラ17年12月1日付)

 観光客の増加はありがたいが民泊はお断り、というのが自治体のホンネだ。

 トラブルあるところビジネスありだ。損害保険ジャパン日本興亜は、民泊仲介の米エアビーアンドビーと提携して、苦情に対する現場への駆け付け対応といった部屋の貸し手支援や保険商品の開発などで幅広く協力する。

 政府、自治体、企業のさまざまな思惑をはらみ、18年6月、民泊は全面解禁する。民泊乱打戦の開幕である。

(つづく)
【森村 和男】 

 
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