会計の見える化・自動化 イノベーションが導く新世代の企業経営(中)
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(株)マネーフォワード
オープンで公正な「お金のプラットフォーム」を構築すること、本質的なサービスを提供して個人や法人すべての人のお金の課題を解決することを目指し、2012年に設立された(株)マネーフォワード。17年9月、東証マザーズ上場をはたした。変わりゆくお金を取り巻く環境と、企業価値を高めるイノベーションの重要性について、辻庸介社長に聞いた。
(聞き手:データ・マックス執行役員 緒方克美)
第4次産業革命を支える「新たな金融」とは
――日本のフィンテック市場は、海外と比べて遅れているといわれることがあります。これも、いわゆる「ガラパゴス的」なものだといえるのでしょうか。
辻 「ガラパゴス的」に見えるかもしれませんが、大切なのはユーザーにベネフィットをどう与えるかということだと思っています。今、フィンテックが急速に進んでいる国の背景には、もともとの既存の金融システムが脆弱な国が、一気にスマホの活用にシフトしているということがあります。対して日本には、既存の銀行を中心とした安定した金融インフラがあるため、一気に進化するメリットはあまりなかった。その結果として独自の進化を遂げているということです。それを「ガラパゴス」というのであればそうかもしれません。とはいえ、2016年にはApple payがモバイルSuicaに対応しました。これは今までであればありえないことです。そういう意味では日本市場がもつ意味は、Appleにとっても大きかったということではないでしょうか。
――日本人独特の現金至上主義的な感覚について、どのように思われますか?
辻 マネーフォワードが提供する「MFクラウド会計」は、データ連携することで、今まで手入力で行っていた作業がほぼすべてなくなり、手元で経営の状況を把握することができます。そのため会計や経理に対する感覚がすさまじい勢いで変わっていくと思いますし、変わることができる企業が生き残っていくと思います。安倍政権は生産性革命を1つのテーマとして掲げていますが、それにはデータの活用が大きな柱になると思います。データの利活用や生産性の向上という面で、クラウド型会計ソフトや給与計算ソフトなどは、中小企業にとってはなくてはならなくなると思います。
テクノロジーを追求しサービスとして提供する
――テクノロジーの進化にともない、人としての判断力の欠如や劣化を危惧する声もありますが、どう思われますか?
辻 そうは思いません。狩りをしていた原始人が銃を使うようになったことで体力が落ちたかというとそんなことはないでしょう。合理的ではない作業や、技術の進歩で人間の手でやらなくてもよくなった仕事を機械に任せれば良いだけのことです。時間が余ることで、よりクリエイティブなことや、人間らしいこと、本来やりたいことができるようになります。ネガティブな部分がないわけではありませんが、総合的に考えればテクノロジーの進化は世の中を良くしていると思っています。
たとえば「FacebookなどのSNSの影響で手紙を書かなくなった」という意見がありますが、ペンと紙を使った手紙は書かなくてもチャットでやり取りを行ったり、古い友人・知人の近況を知ることができるようになったりと、マイナス面よりプラス面のほうがはるかに大きいと感じています。
――便利なサービスや道具は、一度使い始めると便利さが勝ち、やめられなくなりますね。一方で利用に踏み切れない人には「わからないから不安」「不安だから抵抗がある」という障害があるのではないかと思います。
辻 かつて主要な交通手段が馬車から車に代わる際のように、いざ理解して使ってしまえばその便利さに気づきやめられなくなります。とはいえ、人間はどうしても新たなものを取り入れる際には不安が付きまといます。これはある面では仕方のないことです。
――テクノロジーの進化で社会が全体的に豊かになる一方で、経済的な格差が広がってしまうのではないか、という意見に対してはどう思いますか?
辻 何をもって格差とするかという基準次第ですが、全体的に見て生産性を上がることで利益率を高め、1人あたりの給料が上げるという環境をつくらなければなりません。アメリカ経済が伸びているのはまさにそういうことで、FacebookやGoogle、Amazonの給料が高い背景には、企業の生産性の高さがあります。生産性が高く収益率が高いからこそ人材への資金投下が可能になっているということです。つまり、日本経済が豊かに、パイの拡大をしていければ格差自体が小さくなると思います。たとえ格差が現状のようにあったとしても、全体として収入が上がっていくための議論をする方が前向きだと思います。
(つづく)
【文・構成:藤田 勇一】<COMPANY INFORMATION>
代 表:辻 庸介
所在地:東京都港区芝5-33-1
森永プラザビル本館17F
設 立:2012年5月
資本金:18億6,592万1,000円
売上高:(16/11)15億4,200万円<プロフィール>
(株)マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介 氏
京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー(株)、マネックス証券(株)を経て、2012年に(株)マネーフォワード設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める。14年1月、「日本起業家賞2014(The Entrepreneur Awards Japan = TEAJ)」で米国大使館賞受賞。同年2月、「ジャパンベンチャーアワード2014」にて、JVA審査委員長賞受賞。同3月、「金融イノベーションビジネスカンファレンスFIBC2014」にて大賞受賞。16年11月、Forbes Japan「日本のベスト起業家ランキング」にて7位を受賞。同年12月、日経ビジネス「2017年日本に最も影響を与える100人」として選出。関連キーワード
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