NYレポート~今、ホットなエリアはブルックリンだ!(前)
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世界の経済、商業、文化、ファッション、エンターテインメントなどに多大な影響を与え続けている、アメリカ最大の都市・ニューヨーク。超高層ビルが立ち並ぶマンハッタンの摩天楼などが印象的なこの都市は今、「建築」という側面から見るとどういった状態にあるのか――。世界的な建築家の有馬裕之氏に、ニューヨークの建築や都市計画などの現状について聞いた。
廃線を利用した都市公園 ハイライン&ロウライン
ニューヨーク市の中心であり、多くの人種が混在し “人種のるつぼ”とも称されるマンハッタン。五番街やタイムズスクエアなどの繁華街があるほか、世界を代表する金融街・ウォール街があり、多数の超高層ビルが密集する“摩天楼”と呼ばれる象徴的な景観でも知られ、一般的に「ニューヨーク」といった場合、誰もがイメージするのがこのマンハッタンであろう。そうした街のなかで、有馬裕之氏が注目する建築物や都市計画について訊ねたところ、「今、マンハッタンで面白い建築といえば、ハイラインやロウラインではないでしょうか。行政上の問題もあって、日本ではなかなかできない事例だと思います」との答えが返ってきた。
「ハイライン(High Line)」とは、廃止されたウエストサイド線と呼ばれるニューヨーク・セントラル鉄道の支線の高架部分を、空中緑道および廃線跡公園として再設計した全長2.3kmの線形公園である。廃線から20年以上放置され、やがては撤去される運命だった鉄道高架を都市公園へと転用するための工事は2006年に始まり、09年には第1区間が、11年には第2区間が、14年には第3区間が公開された。ビルの3階に相当する地上9mの高さから望むマンハッタンのスカイラインやハドソン川などの眺めや、美しい植栽、個性的なアート、枕木などの随所に残る鉄道の面影など、その魅力は枚挙に暇がなく、今では年間500万人が訪れるニューヨークを代表する観光資源へと変貌を遂げた。
一方の「ロウライン(Low Line)」は、現在プロジェクトが進められている、世界初となる地下公園である。建設予定地は、マンハッタンとブルックリンを結ぶ路面電車の地下の終着駅として使われていた場所で、光ファイバーを通じて自然光が直接採光される公園を建設する計画。現在はまだ実験段階で、オープン予定は2020年となっている。
「ニューヨークはもともと人工的に、格子状の街区をつくってきたゾーンです。その格子状の道とは交わらない流動体で公園を形成していくやり方は、日本ではなかなかありませんよね。廃線跡という、本来なら壊されて終わりのようなものを違ったかたちでうまく活用する動きとしては、とても面白いものだと思います」(有馬氏)。
ニューヨーカーの目はブルックリンへ
だが、その一方で有馬氏は、「私もニューヨークに行った際には、ソーホーとか、ワールドトレードセンターのテロの跡地、アッパーイースト、ハーレムなどいろいろと見て回ってみるのですが、マンハッタンは全体的にかなり煮詰まってきているという印象を受けます。逆にいえば、もはやハイラインやロウラインくらいしか、都市開発の余地が残されていない、ともいえます」と評する。マンハッタンは“摩天楼”などの超高層ビル街に代表されるようにハイライズしてしまっていて、すでに都市として開発の余地が残されていない、というのだ。そんな有馬氏が現在、新たに注目しているエリアはブルックリンだ。
(つづく)
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