今、小売業に何が起きているのか チェーンストアの歴史と現在地(8)
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さまざまな生命が生まれては滅亡し、また多くの文明が誕生しては終焉を迎えた。長い間ほとんど変化とはほぼ無縁だった小売業に、人類登場よろしくスーパーマーケットなどのチェーンストアが誕生したのはつい100年ほど前である。それからというもの小売業界は極めて大きな変化を始めた。こうして起こった地殻変動は今も轟々と続き、かつて一世を風靡したスーパーマーケットすら新しい商流に押し流されようとしている。
アメリカ・チェーンストア巡り 転機は突然やってくる~コンテナストア
コンテナストア(公式HP)。フォーチューン誌の「働きがいのある企業ベスト100」に18年連続で選出されている優良企業である。雇用面では、全応募者の3%しか採用しない狭き門出だ。社員で採用されると260時間以上の研修を受けるのだという。
その基本は「会社に対して満足度の高い社員は顧客からの高い満足を創造する」という考え方にある。コンテナストアは女性の従業員比率が80%超。粗利益率57%を超えることでも知られる企業であり、トップも女性である。店長の話ではトップ以下幹部は、社員満足と顧客のさまざまな要望に対していかに耳を傾けるかを心がけているという。
しかし、ここにもこれからの問題がないわけではない。Eオーダーの問題だ。ニューヨーク・レキシントン通りのコンテナストア。チェックカウンターの奥に「注文はオンラインで、受取はどの店でも」という告知ポスターがある。ちなみにオンライン比率を聞いてみると50%近いという。まさか……と聞きなおすと、チェック端末の中身をわざわざ見せてくれた。
たしかに相当な注文がネット経由で飛んできている。コンテナストアは旅行用品から収納、キッチン用品と多彩な品ぞろえではあるが、わくわく感あふれるお店ではない。言い換えれば何度か訪れれば、あとはオンラインで十分間に合うということもできる。しかし、この類の店だけでなく、リアル店舗の使命はとにかくお客に店に足を運んでもらうことだ。店での感動や共感こそ、店で商品を手に取ってのリピート購入につながる。
オンライン店舗受取は良いが、オンライン自宅配送の比率が増えると店の売り上げが低下すると店舗は売上と利益を稼ぐ拠点から、コスト倒れの稼げない場所へと変貌する。いわゆる店のコストが経営の重荷になるのだ。
百貨店のメイシーなどにすでにその傾向が出ている。オンライン売り上げの伸びとともに店舗の売り上げが低下しているのだ。そのメイシーは今年200店舗以上の閉鎖を予定しているという。ミレニアル世代によるオンライン偏重の消費傾向にだけ目を向けると、メイシーの二の舞になりかねない。杞憂かもしれないが、せっかく丁寧な教育と従業員第一主義で好業績を続けてきた企業だ。強みを生かす形での、さらなる革新を期待したい。
(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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