【森友問題】新築の廃墟「瑞穂の國記念小學院」の今(後)
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籠池泰典前理事長の潰えた野望
「森友学園」の名前がメディアにたびたび登場するようになったのは、昨年2月のこと。2017年4月の開校を目指して準備を進めていた「瑞穂の國記念小學院」の建設予定地である国有地が、同法人に対して不当に安価で払い下げられていたことが発覚したのが発端だ。その後、小学校開設の許認可も絡めて、安倍晋三首相夫人の昭恵氏も含めて政治家の関与の疑惑が浮上するなど、数々のスキャンダルが噴出。同法人の前理事長の籠池泰典氏の国会への証人喚問が実施される事態にまでなった。
一連のスキャンダルの報道を受けて、同法人は小学校の設置認可の申請を取り下げ、開校を断念。すでに校舎建物工事がほぼ終わっていたにもかかわらず、小学校の開校は幻に終わった。
その後、財務省が買い戻し特約に基づく更地での土地の返還を請求。さらに小学校の施工業者から訴訟を起こされたほか、各種補助金の不正受給なども明るみに。同法人は多額の債務を抱えたままでの経営継続は困難と判断し、自力での再建を断念。4月21日に大阪地裁へ民事再生法の適用を申請し、同月28日に同地裁が再生手続きの開始を決定した。
その後、大阪地検特捜部は国や大阪府、市の補助金を詐取したなどとして、詐欺罪などで籠池泰典前理事長とその妻を起訴。近畿財務局長らの背任容疑などについても、刑事告発を受けて捜査している。なお、籠池夫妻が逮捕・拘留されてからすでに約半年が経過。接見禁止なども含め、異例の措置が取られ続けている。昭恵夫人をはじめとした与野党の人脈に対し、度を超した陳情攻勢をかけてまで国有地払下げや小学校開設の許認可などの目的達成を図ろうとした籠池泰典氏だったが、その野望はこうして潰えた。
原状回復義務により解体か?
その後森友学園は、負債約30億円の97%の免除を求めた再生計画案を昨年10月10日に大阪地裁に提出。12月20日に大阪地裁で開かれた債権者集会で可決され、認可された。これにより森友学園は、運営する「塚本幼稚園幼児教育学園」(大阪市淀川区)での幼稚園事業を続けつつ、大阪府豊中市の国有地と、ほぼ完成している小学校舎を第三者に一括転売するよう国に働きかけていく方針だ。
さて、渦中の同小学校の土地および建物は、今後どうなっていくのだろうか――。
まず、土地についてだ。同地(大阪府豊中市野田町10、8,770.43m2)は、16年6月20日に森友学園が1億3,400万円で取得。このときの売買契約では、17年3月までに小学校用地として利用されなければ、国が買い戻すとされていた。だが、さまざまな問題により、森友学園が17年3月に小学校の設置認可を取り下げたことで、同地は17年6月29日に買い戻され、現在の所有権者は国土交通省となっている。
また小学校校舎建物のほうは、17年4月の開校に向けて建設が進められていたが、完成直前に一連の問題が発覚し、建設はストップ。前述したように、いまだ未完成の状態で放置されている。校舎建物は引き渡し前のため不動産登記はなされておらず、施工業者の藤原工業(株)(大阪府吹田市)が占有している状態だ。同地の今後について、森友学園側が求めるような土地・建物の第三者への一括売却が可能かどうかも含めて財務省に質問状を送ったところ、「我々も契約に基づき、原状回復を求めて管財人と交渉を進めてきましたが、可決された民事再生計画も踏まえて、今後も引き続き、関連法令に基づいて適切に対応していきます」との回答だった。
またこの件について、土地・建物の占有・管理を行っている藤原工業は取材を拒否。塚本幼稚園にもコメントを求めていたが、出稿までに返答はなかった。本来であれば、財務省が当初求めていたように、契約上の原状回復義務に基づいて校舎建物は解体されなければならない。仮に、森友学園側が求めるように、この小学校だけ例外的に国有地と建物との一括売却を認めるようなことになれば、世間からはまたしても「忖度した」などと批判を受けかねないだろう。つまるところ世間を騒がせた小学校は、結局日の目を見ることのないまま、やがて取り壊される日を迎えることになる公算が高い。その“Xデー”は、はたしていつになるのだろうか……。
(了)
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