新体制、『脱カリスマ経営』へ 4年以内に関東進出~コスモス薬品(前)
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(株)コスモス薬品は2017年8月下旬、創業者の宇野正晃社長(70)が代表取締役会長になり後任社長に柴田太取締役経営企画部長(45)が就任する新体制を発足させた。創業社長の下で売上高5,000億円超、ドラッグストア5位に躍進したが、さらなる成長を見据え若返りを図る。新体制は4年以内に関東進出を掲げ全国チェーンへの脱皮を目指す。関東圏はウエルシアHD、マツモトキヨシHD、サンドラッグの3大手の本拠地で競争力の真価が試される。大量出店に対応した人材育成が急務になっている。
創業経営者が交代
宇野氏は70歳になったのを節目に交代を決断した。親心とすれば長男の宇野之崇取締役営業企画部長(42)に継がせるのが普通だが、あえてそうしなかったのは、正社員だけで3,500名超(2017年5月期末)になった大所帯を率いていくには荷が重いとして、社会的責任を重視した判断の結果と思われる。
柴田氏は取締役序列5位から4人を飛び越して指名された。流通企業には珍しい、長崎大学大学院工学研究科修了のエンジニア。機械メーカーに勤務していたが、機械見本市でたまたま見学に訪れていた宇野氏と知り合ったのがきっかけで1998年入社した。当時のコスモス薬品は大型ドラッグストアを郊外に展開し始めたばかりで、スタッフ部門が手薄だった。柴田氏は宇野社長の右腕として組織づくりから業績の進捗状況の管理、事業計画の策定など経営企画全般に従事。店長などの現場経験はない。
独自のビジネスモデル築く
宇野氏は宮崎県延岡市の一介の薬局を、一代で西日本最大のドラッグチェーンに育て上げた。医薬品の稼ぎを原資に食品などの生活必需品を低価格で販売し、人口1万~2万人の小商圏単位に大量出店していく、というのが宇野氏の開発したビジネスモデル。言葉のうえでは何でもなさそうだが、医薬品の高粗利を食品の値下げに活用するというのは宇野氏のアイデア。大量高速出店をするため、早期に低コストの店舗運営システムを確立したことも、独創性だけでなく相当の研究と努力の積み重ねがあったはず。
コスモスの急成長を背後で支えたのが、日本人のライフスタイルの変化。共稼ぎ所帯が増え、休日に遠くの商業施設にまで買い物に行くのが敬遠され、自宅近くで短時間に買い物を済ませたいという需要が増大。コスモスはこうした傾向をとらえ、大量高速出店することで客の支持を獲得した。
バブル崩壊後の長期デフレも味方した。実質賃金の伸び悩みで消費者の低価格指向が強まり、スーパーやホームセンターから客を奪っていった。
シンプルな経営手法
経営は至ってシンプル。同業のマツキヨ、サンドラッグや、EDLP(Every Day Low Price:毎日低価格)を掲げるトライアルカンパニーやミスターマックスなどが導入しているポイントカードやクレジットカードによる値引き販売の類は一切ない。米国ウォルマート・ストアーズが提唱したEDLPに忠実なのは、ディスカウントストアでなくドラッグの同社。チラシは打つがあくまで告知で、特売で客を釣るのが目的ではない。
生鮮にも手を出さない。加工業務をともなう生鮮は大量高速出店に不向きで、仮に手がけるとなると店舗運営システムを見直す必要があるためだ。九州では同社の最大のライバル、ダイレックスがテナント委託で生鮮を導入しているが、年間出店数は20店程度に限られている。
M&A(合併・買収)とも無縁。ドラッグストア業界では勢力拡張のため、大手チェーンが地方の中堅中小チェーンを傘下に収めるM&Aが日常茶飯事になっている。17年9月にも、業界2位のツルハHDが静岡県を本拠とする年商950億円の地場大手、杏林堂グループHDを買収した。
コスモスは「(M&Aを)否定しているわけではない」(柴田氏)というものの、標準店舗面積1,600m2級の大型ドラッグストアの出店にひたすら邁進。同業大手がやっているような調剤薬局の買収やコンビニとの提携には目もくれない。
(つづく)
【工藤 勝広】<COMPANY INFORMATION>
代 表:宇野 正晃、柴田 太
所在地:福岡市博多区博多駅東2-10-1
設 立:1983年12月
資本金:41億7,856万6,600円
売上高:(17/5)5,027億3,200万円関連キーワード
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