2024年11月23日( 土 )

波乱模様の経済界(7)~ホテル業界 朝日新聞、銀座に外資系ホテルを誘致(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、東京のホテルラッシュが止まらない。ホテル開発は、土地持ち企業である鉄道系や不動産デベロッパー、ホテル専門業者などが専売特許だったが、異業種からもホテル誘致や進出が相次いでいる。大乱立の様相を呈しているが、はたして大丈夫なのか――。

高級ホテル「ハイアット セントリック」を朝日新聞社が誘致

 高級ブランドや老舗の店が軒を並べる東京・銀座の並木通りに今年1月22日、「ハイアット セントリック 銀座 東京」が開業した。建物は2017年10月に竣工したばかりの「東京銀座朝日ビルディング」(中央区銀座6丁目)で、(株)朝日新聞社の創業の地である。

 同ビルは地上3F・地上12階建て。延べ床面積は1万6,000m2。設計・施工は鹿島建設(株)が手がけ、銀座の街並みに調和した品格と格調ある外装に仕上がったと自慢のビルだ。

 3~12階に入るホテルの経営は、ホテルエリアを賃貸するオリックス不動産(株)がハイアット・ホテルズ・アンド・リゾーツに運営を委託した。「セントリック」は、米ホテル大手のハイアットが15年1月に立ち上げた新しいホテルブランドで、アジア初進出となる。客室は164室(35~127m2)。30~40代を中心に幅広い年代の旅行者をターゲットとしており、平均で1泊4万円台を想定している。

 20年の東京オリンピック・パラリンピックや、その先をにらみ、華の銀座ではホテルの進出ラッシュだ。三井不動産(株)は17年10月、東京・銀座8丁目の旧・日航ホテル銀座の跡地に、宿泊特化型の新ブランド「ホテル ザ セレスティン銀座」を開業。19年には読売新聞東京本社などの「MUJI HOTEL」、20年には森トラスト(株)の「東京エディション銀座」が開業する。

 東京銀座朝日ビルの敷地は、朝日新聞が東京で創刊した年に社屋を構えた、東京創業の地である。二葉亭四迷や夏目漱石、石川啄木といった文豪や詩人たちが、ここで働いていた。

 新聞社がホテルを運営するわけではない。ホテルに賃貸する“大家さん”だ。

 朝日新聞社の有価証券報告書によると、17年3月期の連結売上高は前期比4.5%減の4,009億円、営業利益は同42.0%減の70億円と減収減益だ。朝日新聞グループの事業は、新聞などのメディア・コンテンツ事業、不動産事業、その他事業に大別される。本業のメディア事業の売上高は同4.8%減の3,675億円、営業利益は同77.5%減の15億円と、落ち込みに歯止めがかからない。

 稼いでいるのは不動産事業。いわば大家ビジネスだ。売上高は同2.0%増の201億円、営業利益は同13.3%の49億円。全社の営業利益の7割を叩き出している。大阪の「中之島フェスティバルタワー」や東京の「有楽町センタービル」など有力物件を抱えている。これに、東京銀座朝日ビルディングの「ハイアット セントリック」からの賃料収入が加わる。

 「朝日新聞の本業は、新聞ではなく、不動産賃貸」――ライバル各社からは、こんなやっかみが聞こえてくる。

(つづく)
【森村 和男】

 
(6・後)
(7・後)

関連記事