2024年12月23日( 月 )

変わりゆく都市・福岡のなかで地域の魅力をどう打ち出すか(中)

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(株)エフ・ジェイ ホテルズ 取締役会長 榎本 重孝 氏

 国際的なブランド力を誇る「グランド ハイアット 福岡」を始め、「ハイアット リージェンシー 福岡」や「フォルツァ」シリーズなど、福岡地所グループにおけるホテル事業を担当している(株)エフ・ジェイ ホテルズ。同社は「福岡・九州をもっと熱く、もっと楽しくしたい」「魅力あるまちづくりと地域づくりに取り組みたい」という福岡地所グループの企業姿勢の下、九州ホテル業界のリーディングカンパニーとしての成長を続けている。今回、エフ・ジェイ ホテルズの取締役会長であり、福岡地所(株)の取締役副会長も務める榎本重孝氏に、話を聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

地元では気づかない博多部の魅力

 ――九州各地に行く前に、福岡市内や都市圏で何を見せていくかも重要になりますね。

ハイアット リージェンシー 福岡

 榎本 私は、そうしたなかで1つは、聖福寺や承天寺、櫛田神社などの寺社が立ち並ぶ博多部の魅力が、とてもいいのではないかと思います。市のほうでも「博多旧市街プロジェクト」として博多部の歴史・伝統・文化を再度見直そうという動きも始まりましたし、博多座などとも連携して、福岡・博多の情報文化を発信していくのもいいかもしれません。もう1つは、糸島のほうですね。二見ヶ浦などの景観も良いですし、海の洞窟「芥屋の大門(けやのおおと)」などはまさに絶景です。また、最近「糸島ブランド」で知られるように、新鮮な農産物や海産物などのおいしいものも豊富ですし、魅力に溢れています。あと、意外と喜ばれるのは志賀島です。ああいった砂州によってつながった島というのは、有名なところではフランスのモン・サン=ミシェルなどがありますが、世界でも珍しいようで、行くと結構喜んでくれますね。また、古代氏族の安曇族(あずみぞく)のゆかりの地として知られる「志賀海神社」などもあります。

 このように、福岡には自然や歴史など、魅力的なものが多くあります。ですが、まだあまり知られていなかったり、地元・福岡の人たちは身近なあまり、慣れてその魅力に気づいていなかったりして、なかなか打ち出せていません。ですから、まずは目を変えないといけません。目を変えると、“絵”が描けます。地域の魅力を核にした、壮大な“絵”です。そういう意味では、JR九州さんのクルーズトレイン「ななつ星in九州」などは本当にすごいと思いますね。九州の各地域の魅力をつなげてあれだけの壮大な“絵”を描き、しかもそれが大成功しているのですから。

激化するホテル業界 人材の確保が課題

 ――御社のホテルについておうかがいします。現在、いくつのホテルを運営されておられるのでしょうか。

グランド ハイアット 福岡

 榎本 「グランド ハイアット 福岡」と「ハイアット リージェンシー 福岡」のほか、早良区百道浜の「ザ・レジデンシャルスイート・福岡」、博多駅前の「サンライフホテル2・3」、あとは「ホテルフォルツァ」を博多駅の博多口と筑紫口にそれぞれ1つずつと、長崎、大分で展開しています。

 ――そのうちグランドハイアットは、昨年7月にかけて全客室の改装やレストランのリニューアルを行われましたね。

 榎本 おかげさまでグランドハイアットが16年4月に開業20周年を迎えたこともあって、客室のグレードアップとより快適なホテルステイを提供するために、全客室の改装などを実施しました。新たに生まれ変わった客室は、従来のコンセプトを踏襲しながらも、宿泊客のニーズを満たす、より機能的で使いやすいデザインを取り入れています。また、レストランとティーラウンジ、ペストリーショップが一体となった、新しいスタイルの複合型オールデイダイニング「THE MARKET F(ザ マーケット エフ)」も誕生しており、開業20周年を経て、ホテル機能のさらなる強化が進んでいます。

 ――今、グランドハイアットの稼働率はどのくらいですか。

 榎本 おかげさまで、客室稼働率は85%くらいだと思います。先ほどお話に出ました外国人旅行者も含め、多くの方にご愛顧いただいています。ただ、客室稼働率が好調な一方で、婚礼部門は苦戦していますね。今、ホテル以外にも結婚式場は多くありますし、また結婚式を挙げない若いカップルも増えています。若者人口が減っていることも含めて結婚式の絶対数が減っており、業界全体で苦戦している状況にあります。ただし、「きちんとした結婚式を挙げたい」というカップルは一定数いらっしゃいますし、そうした方々は多少単価が高くても、きちんとした結婚式を挙げられます。

 一方で、婚礼事業の苦戦とは裏腹に、一般宴会事業は盛況です。これは大変ありがたいですね。ここ福岡でも、中小企業まで含めて全体的な景気が良くなってきているのを感じます。おかげさまで、婚礼事業が落ち込んでいる分を、一般宴会事業がカバーしてくれているような状況です。

 ――グランドハイアットのようなハイクラスホテルになると、それだけ人員を確保しておくことも必要になってきますね。

 榎本 おっしゃる通りで、ホテルにとっては人員を確保しておくことが最も重要です。というのも、お客さまにとってはホテルの設備面だけでなく、サービスの面がそのホテルの良し悪しを左右する大事な要素だからです。なので、たとえば婚礼事業でも、婚礼の数が減ったからといって、人員を減らすことはできません。

(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:清原 邦彦
所在地:福岡市博多区住吉1-2-82
設 立:1978年3月
資本金:9,950万円
売上高:(17/5)約129億7,400万円

<プロフィール>
榎本 重孝(えのもと・しげたか)
1946年生まれ。77年、28歳のときにブラジルに渡り、都市開発に携わる。14年間のブラジル生活を経て帰国。現在は(株)エフ・ジェイ ホテルズ取締役会長のほか、福岡地所(株)取締役副会長など、多くの役職を兼務。福岡の地域経済活性化のために尽力している。

 
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