今、小売業に何が起きているのか チェーンストアの歴史と現在地(11)
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アメリカ・チェーンストア巡り グローサラントの雄・ウェグマンズ(2)
困難な課題にあえて取り組む
このウェグマンズがインスタカートを使った宅配サービスを開始した。同社だけでなく、パブリクスなど東海岸のスーパーはこぞって宅配サービスを強化している。
その理由は人がやるからおれもやるという単なる「隣百姓」的な行動の結果ではない。アメリカも、我が国に劣らず高齢化が進行している。誰もが知る通り、広大な国土に加えて、公共交通機関が少ないアメリカでは、車がないと日常生活は不便極まりない。高齢化の進行はその車を運転できない人、体力の低下に伴って広い店内で買い物ができない人の増加を意味する。
店に出かけたくないミレニアム世代と店に行けないベビーブーマーの増加を無視すれば、既存リアル店舗の売り上げは確実に減少し、企業の存続に影を落とす。事実、ここ数年の数値傾向にははっきりそれが表れている。単なる安心安全と利便性だけでなく、暮らしの事情による宅配ニーズが発生しているのである。
しかし、食品、とくに生鮮食品の宅配は鮮度と商品選択のうえでの問題が少なくない。さらにコスト負担の問題もある。
ピックアップと配送のコストは、長きにわたって食品宅配の障壁になっていた。アマゾンの食品宅配「アマゾンフレッシュ」の開始から10年が過ぎた今、必ずしも順調とはいえないのもそれが原因だ。しかし、宅配ニーズの高まりは彼らに中途退場の決断を与えない。この宅配送の問題で費やされた時間の経過が、新たなる参入者を生みだした。それが、インスタカートに代表される買い物代行業者だ。インスタカートなどの宅配企業に登録した彼らは手数料を得て、自家用車で買い物を代行する。それも顧客との契約だけでなく、複数のスーパーマーケットとも提携しているのだ。自分たちでピックアップから専用のレジでの清算、さらに配達まで引き受けるのである。彼らは朝9時から深夜0時までの間で時間と場所を自由に選択し、宅配を行う。インスタカートはほぼ全米でこのサービスを拡大中だ。
アマゾンによるホールフーズの買収も、このフレッシュ宅配への対抗策を考えてのことだろう。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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