地方スーパーの生き残り策(2)
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ミレニアル消費
しかし、ここにきてそんな事情に大きな変化が出始めている。それは日本版ミレニアル世代といわれる新消費世代の登場である。
少子、高齢化。もはや聞き飽きた感がある言葉だが、この現象は今後、九州で急激に進み、消費に劇的な変化をおよぼす可能性がある。
生まれながらにコンピューターゲームや携帯端末などデジタルに囲まれ、それに馴染んできた彼らは今後消費の主役になるが、そのライフスタイルも価値観もその親の世代とはまったく違っている。
彼らはまず、その親の世代の団塊の世代のようにモノを欲しがらない。何が何でも、という上昇志向も希薄である。高価な衣服もぜいたくな食事も、走り性能のよい車も彼らにとってあんまり魅力のあるものではない。
彼らが食指を動かすのは自らが認めた価値をもつものであり、それ以外のものへの欲望は極めて小さい。変化のはしり
たとえばユニクロである。ユニクロのアウトウェアはひとことでいえば肌着的消費である。低価格であるが、その消費耐久性はない。「良い物を大切に何年も」。という感覚はないのである。
数年を経ずしてそれは買いかえられる。いわゆるハイリピート消費である。5万円のコートを毎年は買えないが4,900円のダウンジャケットはいつでも買えるのである。
結果として、その購入頻度は上がる。システムや調達、販売法などが議論の中心になりがちな流通業も隆盛の真実は別のところにある。
ここ10数年来、百貨店が不振でディスカウンターが好調なのは、値ごろが生み出す購入頻度と消費量の増大を背景にしたものである。これこそ、団塊の世代に続くミレニアム世代の価値観を端的に表している。
そんな彼らが食の主役になれば、生鮮へのこだわりは必ず薄くなる。質や付加価値より、簡便性と価格への傾斜が年々大きくなるはずだ。その分野に関しては大手チェーンやドラッグストアが有利である。地域小売業はそこを見過ごしてはならない。グローサラント
もう1つの変化を見てみよう。B級グルメにはこだわる彼らが高級レストランをその対象に加えることはない。バブル期と逆の現象である。それが進行すると団塊の世代以前の消費者に評価された水産売り場の質も精肉売り場の質も差異化の役に立たなくなることになる。
いま、関東の高質スーパーやアメリカのそれでグローサラントという部門が盛んに取りざたされている。日本のスーパーでもずいぶん前からイートインという呼び方でスーパーマーケットの商品を店内で食べる場所が、その入口付近に設けられてはいる。しかし、それはうまく機能してきたとはいえない。
それはアメリカでも同じで、レストランのようにチップは要らないものの、店のデリカテッセンで提供される食事が、お客の期待を満たすものではなかったからだ。九州でそのかたちに積極的に取り組んだのはハローデイである。ハローデイの場合、ホテルからシェフをスカウトしたり、スクラッチベーカリを導入したりしてそれに挑戦した。しかし、スペースやサービスのレベルでそれを発展的に進めるのは容易ではなかった。アメリカでもウェグマンズやホールフーズがレベルの高い食事を提供しているが、それでも店舗によってその成否がまだら模様である。
しかし、ここにきて、そのイートインがグローサラントと名前を変えて新しく登場した。グローサラントとはグロサリーとレストランを合わせたネーミングだ。そしてそこには、よりこだわった食事の提供に加えて、ワインバーや自家醸造のビールなどの提供も始めている。
ひとことでいえばレストランのエリアにスーパーマーケットは侵入したのである。先に発表されたネット企業アマゾンのリアル店舗企業ホールフーズの買収など業態の壁を壊す動きはありとあらゆる分野で起きている。小売業の世界だけでなく、自動車とAI企業のかかわりなどもその表れである。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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