積水ハウス、恒例のお家騒動 クーデターが勃発(2)
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地面師に手玉に取られる
積水ハウスは2017年8月2日、「分譲マンション用地の購入に関する取引事故」について発表した。所有者になりすまし、土地を売買する“地面師グループ”の男女数人に63億円を騙し取られたというものだ。
発表によると、問題となっているのは東京都品川区西五反田2丁目にある広さ約2,000m2の土地。17年4月24日、所有者とされる人物から購入する契約を結んだ。6月1日、契約代金70億円のうち手付金を含め63億円を支払い、分譲マンション用地として購入した。法務局に所有権の移転登記を申請したが、所有者側が提出したとされる書類が偽造と判明し6月9日に却下された。それ以降、所有者と名乗る人物とは連絡が取れなくなったという。
積水ハウスが購入したはずの土地は、JR山手線五反田駅近くのすでに廃業している「海喜館」という元旅館。旅館の所有者はAだが、本人が知らない間に本人確認用の印鑑登録証明やパスポートが偽造され、それを利用した“なりすまし犯”の女が63億円を受け取っていた。積水ハウスは、不動産に関わる詐欺事件として、警視庁に告訴状を提出した。
積水ハウスは、17年2~7月期連結決算で、支払った土地代金63億円から、土地所有者とされる人物からの預り金を相殺し、55億5,900万円を特別損失に計上した。経営責任を取り、和田勇会長、阿部俊則社長は10月から2カ月、減俸20%、ほかの取締役を減俸10%とする処分とした。
地面師とは、土地の所有者になりすまして無断で売買し、代金を騙し取る詐欺師のこと。グループは標的となる土地を探す役や所有者になりすます役、偽造書類を作成する役などで構成される。地価高騰に沸いたバブルの時代には、地面師が横行していたが、バブル崩壊後は下火になっていた。2020年の東京五輪開催を控え、東京都心部の地価は高騰が続く。優良物件確保を急ぐ積水ハウスは、地面師に足元を見透かされた。
「FACTA」がクーデター事件をスクープ
和田会長を放逐するクーデター事件を最初に伝えた会員制情報誌「FACTA」(18年3月号)は、「積水ハウス『老害』会長を放逐」と報じた。
〈スジの悪い話に積水ハウスが引っかかった背景に和田氏の長期独裁がある。五反田近くに和田氏の家があるという。そのお膝元で大きな土地取引をライバルにさらわれたりすれば、懲罰人事は必至。保身を優先した担当者は怪しげな商談にのめり込んだ。
詐欺問題の責任を押し付け合い、昨年末から積水ハウスの取締役会が揉めるようになり、直近の取締役会では、「和田氏と阿部氏がそれぞれ『弁護士を立てて争う』と怒鳴り合うほどの大荒れだった」と住宅メーカー関係者は打ち明ける。〉同誌はこうも報じた。
〈住宅メーカー業界では昨年の早い段階から「積水ハウスの社長交代」が噂になっていた。ただし、その中身が違う。和田氏は会長を続投、阿部氏が退任し、社長には今回、副会長に就任した稲垣士郎副社長兼CFOが昇格するとみられていた。〉
地面師詐欺事件の責任をとらせ、阿部氏を退任に追い込むのが和田氏のシナリオだった。察知した阿部氏が、解任を仕掛けた和田氏を返り討ちにするクーデターで射止めたのだ。
(つづく)
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