今、小売業に何が起きているのか チェーンストアの歴史と現在地(12)
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アメリカ・チェーンストア巡り 何が何でもわが道を行く・アルディ
ドイツ生まれで1970年半ばにアメリカに進出したアルディは当初、苦戦を続けたが、近年その勢力を極めて強いものにしている。当時、ドイツに出たウォルマートがうまくいかず、アメリカに出たアルディがうまくいかない理由を当時ウォルマートの物流担当副社長のハロルド・ジョンソンに尋ねたことがある。彼の答えは「それについては一冊の本になる」だった。端的にいえばよくわからないということである。
どんな質問にも正誤は別にして即座に、簡潔に応える彼はその時、本当にその理由が分からないという顔で答えた。小さな店での買い物になれたドイツ人と大きな店が当たり前の買い物スタイルの違いがその結果につながったとも考えられるが、それから半世紀近くが経過した今、当初は苦戦したアルディは現在、店舗数も1.400店を超え、アメリカにしっかりその根を下ろした感が強い。フレッシュ&イージーで競争が激しいアメリカ西海岸に進出したものの、あっという間にあえなく撤退したイギリス小売大手のテスコと違い、時流と環境をにらみながらその存在と実績を高めたアルディ。弟が経営するトレーダージョーとともにアメリカでのその存在感をますます強くしている。
この店の特徴は取り扱いアイテムのほぼすべてが自社ブランドであることだ。その商品調達は世界中のメーカーにおよぶ。加えて消費頻度の高いステープルアイテムの価格が安い。アメリカ最大のスーパーマーケットチェーンのクローガの格より20%安いという調査結果もある。もちろん、ウォルマートよりも安い。ワインは一本3ドル前後で、PBのウィンキング・オウルの品ぞろえ、牛乳や卵、パンなどの価格も大手スーパーより意識して安くすることで顧客の支持を得ている。店の運営にしてもストイックだ。店内撮影、企業コンセプトの説明はその一切を拒否し、買い物客でないなら出て行ってくれと20代半ばの女性店長がいう。そのドライさがこの企業の真骨頂なのかもしれない
このアルディだが、2018年までに全米2,000店舗を予定しているという。さすがのウォルマートもアルディを意識した価格対抗策を取り始めている。スーパーマーケットの価格競争はさらにその激しさを増す。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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