通販市場は急成長が続く。国内の通販市場は、2018年に初めて10兆円超になると予測されている(富士経済調査)。牽引役はネット通販で、巨大企業アマゾンは膨脹を続ける。一方、カタログ通販は惨敗だ。大丸松坂屋百貨店を傘下にもつJ・フロントリテイリングは、カタログ通販大手の千趣会との提携を解消した。
J・フロントはわずか3年で手を引く
J・フロントリテイリング(以下Jフロントと略)は2月26日、千趣会の株式を売却すると発表。同日、千趣会は、筆頭株式のJフロントが保有する自社株式を買い戻すと発表した。
千趣会は総額70億円の優先株を発行し、政府系の地域経済活性化支援機構(REVIC)が運営する官民ファンドに割り当てる。その後、Jフロントが保有する株式22.62%を75億円を上限に買い戻す。Jフロントの持ち分法適用から外れる。今後はファンドの出資を受けて経営再建を図る。
Jフロントは2015年4月、千趣会が実施する増資の引き受けなどで発行済み株式の22.62%を100億円で取得し、筆頭株主になった。
Jフロントは、市場の大きい30~40代の女性への訴求力が弱い、インターネット通販事業の伸びが鈍い、という課題を抱えていた。
千趣会との提携はJフロントの弱点を補う効果があるとみられていた。しかし、提携が失敗だったことがはっきりしてきた。千趣会は衣料品のネット通販の販売比率を高めていたが、特徴のある商品がないことから、先発組との競争にさらされ大苦戦した。
Jフロントが千趣会との提携を解消したのは、「通信販売業界における競争激化により、千趣会の経営環境が悪化」(発表文)したこと。相乗効果が期待できないと見切りをつけた恰好だ。
千趣会はネット通販に力を入れたが赤字転落
千趣会の2017年12月期の連結決算は最悪だった。売上高は前期比2.4%減の1,259億円、本業の儲けを示す営業利益は42億円の赤字(前期は11億円の黒字)、純利益も110億円の赤字(前期は14億円の黒字)に転落した。
赤字転落は、主力の通販事業の不振だ。近年はカタログ通販からネット通販に力を入れてきたが、ネット通販も振るわなかった。
大黒柱である通販事業の売上高は1,012億円で、前期より52億円の減収。カタログ発行部数を約4割にあたる2,840万部減らしたことから売上が落ち込んだ。
通販事業の営業利益は57億円の赤字(前期は2億円の赤字)と赤字幅が拡大した。通販事業の中心であるアパレル(衣料品)の売上高は418億円で、前期より31億円減った。カタログ通販は縮小していくが、今後の主力に置くアパレルのネット通販で勝ち残ることができるか。そのメドが立っていない。
(つづく)
【森村 和男】