2024年11月28日( 木 )

韓国造船業界にチャンス再到来(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 日本は世界最強の造船国家であったが、2回に亘るオイルショックで、日本の造船業界は試練に立たされる。その結果、日本の造船産業は構造調整に取りかかることになる。その際に、最初にリストラしたのは設計人材で、その結果、日本は造船の設計能力が衰えることになる。
 その後、韓国の造船会社が台頭し、韓国は1990年度末から造船で世界王座に上り詰めることになる。しかし、中国は韓国より3分1にも満たない安い人件費で造船産業に食い込み、今は受注量などで韓国を追い抜いて世界一になっている。しかし、その中国ですら今は世界の景気が低迷し、苦境に陥っている。造船産業は今まで世界的に厳しい冬が続いていたが、造船産業に久しぶりに良いニュースが流れている。

 船舶は例えていうなら、海に浮いている建物のようなものだ。LNG船の場合、長さは約300m、甲板の面積は、サッカー場3つ分の面積より大きい。そこに使われる鋼材は4万ドン~5万トンで、15tダンプトラックの3,000台分に相当する。商船には主に液体などを運版するタンカー、穀物、鉄鉱石などを運ぶバルク船、それからコンテナを積むコンテナ船などがあるが、 LNG船は商船のなかでも一番付加価値の高くて、超低温と超高圧の技術が必要な船舶である。
 LNG船1隻の価格はだいたい2億ドルくらいで、世界で運航している370隻のうち、韓国の造船会社が建造したのは200隻である。韓国は世界のLNG船の70%の市場シェアを握っている。

 ところが、世界のエネルギー市場は天然液化ガス(LNG)にシフトしつつある。エネルギーは石炭から、石油、それから最近は環境に優しい天然液化ガスに軸足を移している。その影響で天然液化ガス(LNG)は毎年2%ずつ需要が伸びている。その理由としては、中国などで環境汚染が深刻で、クリーンなエネルギーが切実に求められているからだ。
 ただ、LNGを運ぶためには、天然液化ガスをマイナス162度まで温度を下げて液化する必要がある。ガスを液化すると、体積が600分の1になって運びやすくなる。 LNG船を建造するためには、マイナス162度の超低温でも耐えられる素材と、超高圧にも大丈夫な技術が必要になる。もし、爆発でも起こるなら、大きな惨事になる。既存のバルク船とかコンテナ船を建造することとは事情が違うのである。マージンも一般の船舶は10%程度であるが、LNG船は20%になる。韓国の造船会社はLNG船を建造する能力においては現在世界最強である。

 ところが、 LNG船市場に追い風が吹いていて、その兆しが顕著に現れ始めている。2020年に予定されている船舶に対する環境規制が原因である。2020年1月から船舶からの硫黄排出量を既存の3.5%から0.5%に削減しないといけないことになる。船舶の台数は自動車に比べ、少ないが、自動車の数倍の環境汚染の犯人であることが判明したからだ。造船産業の専門アナリストの分析によると、今後10年間で造船産業は5倍くらい成長する大きなチャンスが待ち構えているとのことだ。
 今までの船舶では環境規制に対応できないため、数十年ぶりに大量の新規発注が発生するらしい。もう1つの要因は、アメリカがガスを積極的に輸出する政策を取る為、今後LNG船の需要が増加するとのことだ。以上のような理由で、造船産業に大きなチャンスが再到来するようだ。

(了)

 
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