積水ハウスの新役員人事、和田派を一掃~火種として残る地面師詐欺事件の調査報告書(後)
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粛清と論功行賞
権力基盤を固める人事の鉄則は粛清と論功行賞だ。
まず粛清人事。取締役相談役の和田勇氏は取締役を外れ、相談役に退く。1月のクーデター事件の際、和田氏を支持した伊久哲夫・取締役副社長は退任し、顧問に就く。伊久氏は技術・開発部門のトップだ。次に論功行賞人事。阿部氏を支持した内田隆・取締役専務執行役員は代表取締役副社長に昇格する。財務・人事など管理部門を率いる。
新任取締役は2人。社内からは三浦敏治・常務執行役員(技術本部長委嘱)が昇格。技術部門の伊久氏の後任だ。社外からは吉丸由紀子・ニフコ執行役員が加わる。
社外取締役には、サエグサ流通研究所代表取締役の三枝輝行氏と東京都市大学特別教授の涌井史郎氏を加えて3人に増える。三枝氏と涌井氏は、地面師詐欺事件の調査対策委員会の委員で、クーデター事件のときには、和田氏を支持したとみられる。
取締役は11人で変えないが、和田派と阿部派の力関係は大きく変わる。解任劇のとき、和田派は4人。和田氏と伊久氏が退くため、和田支持派は2人にとどまる。阿部派は9人になる。もう1つの注目は監査役人事。3月5日、個人株主から阿部氏に対し、損害賠償を求める代表訴訟の請求が監査役会に提出された。監査役会は60日以内に結論を出さねばならない。
和田氏を支持した常任監査役など3人が退任。常任監査役2人が就任。社外4人、社内2人の体制になる。和田氏支持の監査役を替えるのは、代表訴訟の請求に備えた布石だろう。
執行役員も大幅に入れ替わる。地面師詐欺事件の土地取引に関わった中田孝治・常務執行役員(前法務部長)と黒田章・執行役員(前不動産部長)を含め、6人の執行役員が退任。7人の執行役員が昇格。7人が新たに執行役員になった。決裁した阿部氏の責任は不問に付されて、現場だけに責任を押し付ける“トカゲの尻尾切り”と不満がくすぶることになる。調査報告書の全文公開を巡り、会社側と調査委が対立
阿部氏のアキレス腱は、地面師詐欺事件に関する調査対策委員会の調査報告書である。
〈積水ハウス詐欺被害報告、調査委が「会社の都合のいい部分のみ要約」と抗議、全面公表要望〉の見出しで、産経ニュース(3月16日付)が報じた。
調査対策委員会は昨年9月に設置された。調査委は、委員長が社外監査役の篠原祥哲氏(公認会計士)、委員が社外監査役の小林敬氏(弁護士)、社外取締役の三枝輝行氏、社外取締役の涌井史郎氏の4人で構成。同社は3月6日、調査報告書の概要のみを公表したが、阿部氏の具体的関与については触れられていなかった。〈「調査報告書は、社外役員として外部の目による原因究明を依頼されてまとめた。会社の都合で要約した文書を公表することは了承していない」。調査委の1人は、同社が全文公表しなかったことについて批判した。〉
これに対して、〈広報部は「調査委は、社外役員の立場から社内のリスクを取締役会に報告してもらうのが目的。全文公表の予定はない」とする〉
調査報告書に阿部氏の“不都合な真実”が書かれているので、全文公表はしたくないという意図がミエミエだ。発足したばかりの新体制のコーポレート・カバナンス(企業統治)の真価が問われることになる。4月26日の定時株主総会は調査報告書をめぐって、大荒れになりそうな雲行きだ。(了)
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