2024年11月14日( 木 )

豊洲移転に「危ない、待った!」 構造設計一級建築士の鳴らす警鐘(後)

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 豊洲市場 水産仲卸売場棟の構造計算を検証し、3つの疑義(以下、参照)をあげた(協)建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事。同氏の指摘に、東京都・小池都知事、日建設計、東京地裁は、事実上の黙殺。権力者側が総ぐるみになった隠ぺい行為か。仲盛氏は、当事者である市場関係者の前に立ち、目前の危機を知る者の務めとして、力の限り警鐘を打ち鳴らす!

豊洲市場 水産仲卸売場棟に関する仲盛氏の3つの疑義

 (1)層間変形角が建築基準法を満たしていない。
 (2)保有水平耐力計算における係数を不適切に低減しているため、安全が確認できない。
 (3)建物1階の柱脚の鉄量が規定の半分程度しか存在しない。

透けて見える東京・小池都知事のホンネ

 ――民間の建物で建築基準法違反があった場合、行政から是正勧告を受けたという話は聞いたことがありますが、公共建築物は例外なのでしょうか。

 仲盛 民間の建築物に対しては、容赦なく是正を勧告されます。もちろん、公共建築物であっても、建築基準法違反であれば、行政庁は是正を勧告しなければなりません。

 たしかに、豊洲の建物に是正勧告がなされた場合、東京都、小池百合子都知事にとっては不都合なことが多すぎると思います。

 「豊洲市場の開場時期は決まっているし、遅れれば、築地市場の解体が遅れ、東京五輪にも影響が出る」

 「日建設計は日本最大手の設計事務所であり、その最大手の設計事務所の偽装を認めれば、多くの東京都の建築物に影響をおよぼす」

 「何より、偽装を見逃した東京都の責任を追及されることが最も困る」

 「臭いものに蓋をして、さっさと新市場を開場してしまいたい」というのが本音でしょう。しかし、その姿勢は、行政の職務放棄であり、都民への裏切り行為以外の何物でもありません。都民の皆さまがもっと怒りの声を上げるべきだと思います。

 ――NetIBでは、市場問題プロジェクトチーム(PT)の委員であり、構造設計者の団体(一社)日本建築構造技術者協会(略称:JSCA)の森高英夫会長にも質問状を送付しましたが、回答は得られていません。

 仲盛 市場問題PTの委員であり、構造設計者の団体JSCAの森高会長は、本来は、不適切な設計に対して指摘をすべき立場で委員をされているはずですが、PTにおいて、「日建設計は設計の責任を負う立場で安全性を宣言されており、私も別に問題はない、同意します」とコメントしています。完全に行政側に取り込まれており、委員としての役割をはたしていませんね。
 東京都も日建設計もJSCAも、総ぐるみで、偽装を揉み消し、豊洲市場を強引に開場しようとしています。東京都としては、開場を遅らせられない事情はあると思いますが、建物の安全性は最優先事項であるはずです。
 もし、市場の建物が地震により倒壊するような事態となれば大勢の市場関係者が犠牲となって市場機能が停止し、都民の生活に重大な影響をおよぼします。今、いったん立ち止まり、施設の安全性を確認し、必要な是正措置を講じたうえで、新市場を開場すべきです。

 ――4月14日、東京で開催される移転反対集会で、仲盛さんが講演されるそうですね。市場関係者の方たちに何を伝えたいですか。

 仲盛 築地市場の労働者団体から依頼があり、集会に出席して話をさせていただくことになりました。市場で働く方々は、豊洲市場の有害物質に関する問題が解決されていないため不安を抱えているうえ、構造上の安全性についても不安を抱えることになり、豊洲への移転など考えられない状況だと聞きました。

 行政は、市場関係者や都民の意思に関係なく、開場を強行するでしょう。東京都による強行開場を阻止するには、やはり当事者が行動を起こすべきです。

 市場移転で構造上の安全性の問題に直面する市場関係者こそ、東京都・小池都知事に対して、法的手段を行使できる立場にあります。その声は司法も絶対に無視できないはずです。

 私は捨て石になっても構いません。大げさな言い方ですが、市場関係者の皆さまには、私の屍を越えて、自分たちの意見を行政や司法にぶつけていただきたいと思います。

(了)
【山下 康太】

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(中)

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