2024年11月15日( 金 )

KWSが進める海外水ビジネスの最前線~われわれのビジネスはこれからが正念場だ!(前)

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 (株)北九州ウォーターサービス(本社:北九州市小倉北区、富増健次社長、以下、KWS)は、同市の上下水道事業での準コア業務(施設の運転業務など)、広域事業(宗像地区上水道の包括事務委託)、海外事業(カンボジア、ベトナムなどでの海外水ビジネス)を目的に、2016年4月から営業を開始(設立は2015年12月)した公民出資による株式会社だ。また、KWS海外事業部は、民間から147社が参加する同市の海外水ビジネス推進協議会の事務局も担当していることから、同市における海外水ビジネスの調整役ともいえる。営業開始から2年。どのような海外ビジネスが生まれたのか。今後どのような案件形成が見込まれるのか。KWS海外事業部長で、同協議会事務局長も務める久保田和也氏に話を聞いた。

 KWSは、北九州市上下水道局、(株)安川電機(本社:北九州市八幡西区)、メタウォーター(株)(本社:東京都千代田区)など公民7者が出資。資本金は1億円。出資比率は、北九州市54%、安川電機、メタウォーター19%。前期の売上げは約10億円。前身は、一財北九州上下水道協会。

 主に市民の上下水道料金で運営される北九州市上下水道事業が、なぜ海外水ビジネスを進めるのか。その理由の1つが「職員の技術力の向上」だ。

久保田 和也 事務局長

 北九州市の上下水道事業は、その創設はいずれも約100年前。インフラの普及拡張が終わり、維持更新の時代に突入して久しい。技術職員は、新たに上下水道インフラを整備する機会がなく、そのノウハウが失われつつある。つまり、上下水道局でありながら、上下水道インフラを一から整備できる職員が1人もいなくなってしまうわけだ。ノウハウをどう継承していくか。その回答が、海外での上下水道インフラ整備への参画だった。その背景には、「拡張屋の灯を消したくない」という思いがある。

 KWSの設立には、理由がある。日本国内の上下水道事業は、ほぼ自治体など公的機関が運営しているが、資材提供や工事などを行うのは民間企業だ。海外でビジネス展開するには、民間企業との連携が不可欠になる。ただ、自治体職員の立場で民間企業社員と一緒に仕事をするわけにはいかない。そこで、公民共同出資の企業が必要となったわけだ。

 同市ではこれまで、JICAの草の根技術協力事業プロジェクトなどを通じて、カンボジア、ベトナム、中国、インドネシア、ミャンマーでの上下水道事業分野など、さまざまな技術協力を長年にわたり行ってきた。この間に蓄積された現地人脈などのノウハウが、KWSの武器だ。

 現地人脈がなぜ武器になるのか。カンボジアやベトナムなどの発展途上国の上下水道運営は、日本と同じく公的機関。ただ、日本と違うのは、官尊民卑の意識が非常に根強いという点だ。たとえ、日本の大手企業経営者であっても、現地政府高官に会うのは難しい。なぜなら、彼らは、特権階級の人間だからだ。東南アジアには、北九州市などの公的機関がバックにいないと、会ってももらえないビジネス環境がある。

 北九州市、KWSなどと組んで、めでたく政府高官にお目通りがかなっても、ただちに商談が成立するわけではない。「ほら、日本の技術はすばらしいでしょ!」といくらアピールしたところで、「現地のニーズに合っていない技術が受け入れられることはない」からだ。

(つづく)
【大石 恭正】

 
(後)

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