2024年11月28日( 木 )

環境規制の拡大とビジネスチャンス(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 筆者は2003年に初めて上海を訪問した。当時の上海の空は、どんよりしていた。私はそれを天気のせいだと思っていたが、後になって、その原因は大気汚染のせいだとわかった。 

 地球温暖化や、大気汚染がどうだと言われても、正直、一般人にはあまり実感が涌いてこないかもしれないが、最近、韓国でも中国から飛んでくる微小粒子(PM2.5)の影響で、大気汚染の深刻さを肌で痛感するようになってきている。

 微小粒子は、私たちの日常生活にも影響をおよぼし始めている。韓国では数年前まではマスクを着用している人を見かけることが難しく、多くの日本人がマスクをしている風景に、韓国人は違和感を覚えていた。ところが近年、韓国でも多くの人がマスクをするのが普通になりつつある。

 そのような中、各国では産業化と自動車の普及で深刻になりつつある大気汚染問題を解決するために、環境規制に取り組んだり、規制を強化したりしている。環境問題で一番危機感を抱いているのは、やはり中国政府である。中国政府はこの数十年間、ほとんど放置されていた環境問題に取り組み、法整備を進めている。

 環境規制が厳しくなるにつれ、中国では環境保護当局の監査で、数万の工場が操業を停止させられている。中国政府は人体にとても有害であるとされている微小粒子(PM2.5)の濃度を2035年までに1立方mあたり35マイクログラムに削減すると発表している。

 大気汚染を食い止めるために、中国では自動車の環境規制も強化されている。中国では、メーカーが販売する自動車のうち、EVなど環境に優しい自動車を一定比率にすることを義務付ける規制もスタートした。その比率は19年に10%、20年に12%である。深刻な大気汚染への対策を講じる一方で、自動車産業の既存のゲームのルールを変え、自動車産業で覇権を握りたいという中国政府の思惑もあるだろう。

 世界的に見て、地球温暖化や大気汚染に対する環境規制が最も厳しいのは、欧州だ。2021年までに走行1kmあたりの二酸化炭素(CO2)の排出量を現行基準より3割少ない平均95グラム以下に抑えないといけない。環境規制は自動車業界だけでない。造船業界でも2020年に環境規制が強化され、硫黄の排出量を現行基準の3.5%から0.5%に抑えなければならなくなった。このような流れのなかで、今回はウレタンフォームの話をしてみることにする。

(つづく)

 
(後)

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