2024年11月28日( 木 )

環境規制の拡大とビジネスチャンス(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 ウレタンフォームには大きく分けて軟質ウレタンフォームと硬質ウレタンフォームがある。軟質ウレタンフォームは日常生活に深く浸透しているので、いろいろな場面で目にすることが多い。軟質ウレタンフォームはクッションやマットレスなどに利用され、自動車を始め、いろいろな用途で使われている。

 しかし、今回は軟質ウレタンフォームではなく、皆さまにあまり馴染みのない硬質ウレタンフォームについてである。硬質ウレタンフォームは文字通り硬くて、断熱材などに使われている。硬質ウレタンフォームの用途はとても広く、ビル・マンションや木造住宅などの断熱はもちろん、冷凍・冷蔵・保温用などにも使われている。硬質ウレタンフォームをつくるためには、原料(ポリオールとイソシアネート、これは世界的な化学メーカーで生産)と触媒、発泡剤などが必要になる。

 その発泡剤として以前はフロンガスの一種であるCFCが使われていたが、フロンガスはオゾン層を破壊するということで環境規制があり、代替ガスであるHFCが使われていた。しかし、今後の流れとしてはノンフロンガスが求められている。そのような中、韓国で、ガスではなく、世界で初めて水を発泡剤に使い、硬質ウレタンフォームの発泡に成功した中小企業があり、話題である。

 会社名は(株)リードパワー(代表取締役は金光烈氏)である。世界的な化学メーカーである米ダウケミカル、独BASFなどでは、水で発泡をするのはあり得ないことだと思われ、開発を断念したが、リードパワーでは水の発泡に果敢に挑戦し、数年の苦労を重ねた結果、ついに成功した。最初は誰にも信用してもらえなかった。

 しかし、もともとカルテックスに勤めていて、いつも自分にしかできないことに挑戦したいと思っていた金社長は独立し、このような世界で初めての試みに挑戦することになった。現在では韓国企業数社が水発泡の硬質ウレタンフォームを採用し、数十億ウォンの売上を確保するようになった。

 日本でも硬質ウレタンフォーム関連の数社がテストをし、それに合格している。金社長の説明によると、日本の市場を開拓するため、業界の方と会う中で、現場で吹きつけをする際に使う装置があるが、それが大きすぎて不便で仕方がないという話を聞き、装置の開発にも挑み、3年目に世界一コンパクトで、使いやすい吹きつけ装置の開発にも成功している。

 この装置に対する市場の反応は大きく、これが一番先にビジネスになりそうだと金社長は言っていた。硬質ウレタンフォームはボードのようなパネル製品か、現場で吹きつけをするのがメインである。
ウレタンフォームは断熱性能がとても高いだけでなく、ほかの断熱材にはない自己接着性という優れた特徴がある。すなわち、硬質ウレタンフォームは接着剤を使わなくても 金属・合板・コンクリートなどの対象物表面に吹き付けると、対象物に強く接着する特徴がある。

 最初は開発に成功したものの、業界のことに精通しているわけではないので、コストが高く、問題になっていたが、今は全世界の市場にも精通し、世界で一番安いところから原料を調達することにより、価格競争力も確保しているという。世界各地から問い合わせが殺到し、現在嬉しい悲鳴を上げている。
同社は環境規制という規制を逆手にとり、ビジネスチャンスを生かしたケースである。同社のビジネスモデルは装置の販売と硬質ウレタンフォーム(ボードと吹きつけ)をつくるための原液の提供になる。環境規制が進むなかで、それをビジネスチャンスへと変え、技術のブレークスルーを成し遂げることによって、新たなグローバル企業が誕生するかもしれない。

(了)

 
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