化粧品・健康食品通販業界の雄~幾多のトラブルも跳ね返す販売力(前)
-
(株)ディーエイチシー
健康食品・化粧品通販業界のリーディングカンパニーとして知られる(株)ディーエイチシー。当時は主流ではなかった低価格化と通販展開で成長を続けている。表示に関する行政指導や企業との訴訟トラブルも多いことも懸念されているが、それを跳ね返す販売力で確固たる地位を確立している。
翻訳・通訳事業で創業「8億円問題」で話題に(株)ディーエイチシーは1972年に、大学の研究室を相手に海外の技術書や研究論文の翻訳委託業として創業している。創業者で現代表取締役会長の吉田嘉明氏は佐賀県出身。同志社大学文学部英文学科卒業で英検一級の資格をもつ。社名の由来は「大学翻訳センター(Daigaku Honyaku Center)」の略によるもの。昨今は化粧品や健康食品の通販事業での認知度が高いことで、あまり知られていないが、累計1万社以上のクライアントの翻訳・通訳の実績を持ち、現在も海外ベストセラーの翻訳などを手がけ、国内有数の翻訳・通訳会社として業務を続けている。
めったにメディアに顔を出さない吉田氏の名前が大きく取り上げられたのが、2014年3月に、週刊新潮でスクープされた「8億円借入問題」。当時、みんなの党代表だった渡辺喜美参議院議員が、10年の参議院選挙と12年衆議院選挙時に、吉田会長から計8億円を借り入れ、約5億円が返済されていないとした手記が掲載されたというもの。その後、両者が返済額になどに関する主張の相違や、渡辺氏がどのような用件で借入したのかが問われた。
渡辺氏は、公職選挙法・政治資金規正法両法違反などで東京地検特捜部に告発され、代表を辞任するまでの騒動になった。渡辺氏と同じように吉田会長と関係のある政治家は少なくないようで、吉田会長は以前自社ホームページ上で、「企業人は傍観しているだけでは駄目だと思う。政治家の中にも、若手の官僚の中にもこの国を真剣に憂慮している人たちがいる。こういう人たちを私たちは支援したい。平成の坂本竜馬が誕生する手助けをしましょう」とコメントしていた。
また、一方で、週刊新潮の手記では「官僚たちが手を出せば出すほど、日本の産業はおかしくなっているように思う。官僚機構の打破こそが、今の日本に求められる改革」とし、いわゆる「官僚嫌い」であることを述べている。こうした考え方が影響しているのか、半ば行政に反発するかのような事業姿勢も見られる。後述するが、たとえば商品の表示に関わることで、たびたび行政指導を受けていることなど、官僚機構に対するある種の反発とも感じなくもない。化粧品・健食通販参入、売上高1,000億円企業に
80年ごろから化粧品事業を開始。化学合成成分で製造された化粧品が全盛だったころに、あえて天然成分の機能性を訴求した商品づくりに注力。83年にスペイン産のオリーブオイルを使用した美容液「DHCオリーブバージンオイル」のヒットをきっかけに、自然派化粧品を中心とした商品ラインナップを推進。販売も当時主流だった百貨店などのリアル店舗や訪問販売ではなく、通信販売による展開で、テレビ、新聞・雑誌広告、サンプリング、DM、イベント協賛などで販促活動を行い、受注・発送までを迅速に行う物流システムを確立。95年には健康食品事業に参入。定価1万円台の高価格帯の商品が多かったなか、低価格帯商品を次々と投入。約7年で健康食品通販の売上トップクラスの企業となり、今日まで通販の顧客会員数は1,415万人に上る。
翌96年にはインナーウェアの販売を開始し、アパレル事業に参入。99年には実店舗販売に参入し、コンビニエンスストアでの展開を開始。2002年には静岡・伊豆にある赤沢温泉ホテルの運営を始めている。03年からは直営店がオープン、現在は国内で227店舗を展開している(17年2月現在)。05年から医薬品の製造販売を開始。08年には海洋深層水事業として赤沢工場を竣工したほか、ヘリコプター事業を開始している。ここ数年は関連会社を多く設立させており、03年12月に定置網漁で年間平均水揚量33万tの漁業事業を行う(株)赤沢漁業を始め、14年8月には、新潟にある酒造業の小黒酒造(株)を買収。(株)DHC 酒造として営業を開始している。
15年1月、主に芸術を始め、映画、競馬中継など、テレビ番組を供給する(株)シアター・テレビジョンの株式を取得し、インターネット配信、BS、地上波で放送事業を手がける(株)DHCテレビジョンとして開設した。
同年3月には食肉加工業の米久(株)が所有していた、ビール製造販売事業を譲り受け、(株)DHCビールとして営業を開始している。16年5月にFMラジオ局(株)CROSS FM、同年10月には、同社グループの総合広告代理店業として、(株)伝々虫を設立。M&Aを軸とした新会社を多く立ち上げている。このほか、海外進出にも積極的に展開しており、95年に米国に「DHC USA INCORPORATED」を設立したことを皮切りに、台湾、韓国、中国、英国に拠点を置き、シンガポール、カンボジア、タイ、ベトナムに代理店を設置。自社商品を直営店や小売店への店販を中心に、越境ECなどのインターネット通販で展開している。
同社の近年の業績を見ると、直近の17年7月期は前期比ほぼ横ばいの売上高1,056億7,400万円で、営業利益が67億5,200万円、経常利益が72億9,100万円、当期利益は43億1,600万円。売上高の内訳は、化粧品が5割超、健康食品が約3割、残り約2割がその他の事業。通販購入者の1人あたりの平均単価は約7,000円前後とみられる。過去5年では13年7月期の1,137億7,900万円、営業利益160億9,400万円、経常利益180億4,700万円、当期利益95億9,700万円をピークに、売上高は1,000億円台でほぼ横ばいにある一方、利益は減少傾向にあり、4割以上減少しているが、大きな影響は見られていない。
(つづく)
【小山 仁】
<COMPANY INFORMATION>
(株)ディーエイチシー
代 表:吉田 嘉明
所在地:東京都港区南麻布2-7-1
設 立:1975年12月
資本金:33億7,729万円
売上高:(17/7連結)1,056億7,400万円関連キーワード
関連記事
2024年12月20日 09:452024年12月19日 13:002024年12月16日 13:002024年12月4日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す