スルガ銀行経営陣も関与か~金融庁が立ち入り検査
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女性向けのシェアハウスを運営する東京の不動産会社スマートデイズが9日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、受理された。それを受けて13日、約700名のシェアハウス投資家に1,000億円の融資をしていたスルガ銀行に、金融庁が立ち入り検査に入ったことがわかった。
「NetIB-News」では3月12日から3回にわたり、「スルガ銀行~『かぼちゃの馬車』への融資を検証する」を連載。4月11日に「『スマートデイズ』が民事再生法申請」を掲載し、同行の審査能力の欠如を問い、その責任は大きいと報じていた。
スルガ銀行について
スルガ銀行は創業者岡野喜太郎が1887年に結成した共同社が前身。
・1895年に(株)根方銀行として静岡県沼津市に設立された地方銀行。
・1912年7月19日に(株)駿河銀行に商号変更。
・2004年10月1日に現在のスルガ銀行に商号変更した。
・店舗数は133店で、静岡県東部と神奈川県西部を主な地盤としている。スルガ銀行の営業戦略
◆【表1】静岡県地銀(4行)の預貸金比較表を見ていただきたい。
・静岡県に地銀は4行(静岡・スルガ・清水・静岡中央)あるが、静岡銀行が圧倒的な強さを持っているのがわかる。
・そのため、1985年に就任した創業一族の岡野光喜前社長(現会長)はリテール(小口)バンキングへの転換を打ち出し、行名表示を駿河銀行からわかりやすい現在の名称に変更している。
融資の大半を個人向けローンに注力する独自のビジネスモデルで知られ、近年は比較的金利の高いアパートローンを強化することで、地銀トップクラスの高い収益率を上げていた。※クリックで拡大
◆【表2】スルガ銀行の貸出金(単体)推移表を見ていただきたい。
・過去10年の貸出金の推移である。2007年3月期の総貸出金は2兆2,468億円。大きな比率を占めているのは消費者ローンで1兆6,686億円(74.3%)。その内訳は住宅ローンが1兆4,469億円(64.4%)。近年シェアハウスなどへの融資で残高が大きく増加している「その他個人ローン」は、2,217億円(9.9%)だった。
・しかしスマートデイズが設立された2012年8月以降、「その他個人ローン」は急激に増加しているのがわかる。2014年3月期は前年比+1,105億円。2015年3月期は前年比+1,399億円。2016年3月期は前年比+1,250億円といずれも1,000億円を超える増加となっており、住宅ローンより金利が高くとれるシェアハウス投資家への融資を全行挙げて『忖度』したのが読み取れる。
・シェアハウスへの投資家への融資は中止したものの、17年12月期の「その他個人ローン」の残高は9,139億円となっており、2007年3月期の4.1倍となっている。※クリックで拡大
問われるスルガ銀行の経営責任
◆複数の関係者によると、『スルガ銀行は融資を通しやすくするため、投資家の年収証明や預貯金の残高などの審査書類の改ざんに、一部役員が主導するかたちで関与した疑いがある』という。
投資家の相談を受けている弁護士も、「スマートデイズ社の販売代理店経由でスルガ銀行に提出された審査書類では、『預貯金残高が100倍程度に水増し』されている例が多数みつかっている」と話す。◆民事再生法を申請したスマートデイズは12日、オーナー向けに説明会を開催。経営破たんに反対するオーナーたちが経営陣に詰め寄り、現場は一時騒然としたと伝えられるが、いずれにせよ、オーナーたちの矛先はスルガ銀行に向かうものとなる。
◆13日の株価は前日比+40円の1,594円だった。金融庁の立ち入り検査が報じられ、週明け16日の株価に注目が集まっていたが、【表3】の通り、終値は1,563円(前日比▲31円)で、前年3月末比▲781円(▲33.3%)となっている。
◆金融庁は3月中旬、スルガ銀行に対して銀行法に基づく報告命令を出している。その報告を受けて、全行ぐるみの不正融資の可能性が高いとの疑いを持って、立ち入り検査に入ったものと思われる。今回の検査で役員の関与や組織的な不正行為が判明すれば、業務改善命令などの厳しい行政処分を受けるだけでなく、融資そのものの是非が問われることになる。今まさに、スルガ銀行は危機存亡の時季を迎えているといえそうだ。
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】
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