2024年12月23日( 月 )

久留米欠陥マンション裁判の残る争点「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ不足」(前)

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施工の瑕疵は鹿島建設の調査で判明

 福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の区分所有者らが建替えを求めた裁判において、原告が主張している主な施工の瑕疵は、鉄筋のかぶり厚さ不足、図面に明記された全階30カ所の梁の未施工、コンクリート内部の異物混入、コンクリート中性化が異常な速さで進行、コンクリートの剥落などである。

 これらの施工の瑕疵は、施工した鹿島建設が自ら実施した調査で判明したが、同社は、共有部分と専有部分の一部のみ補修を行っただけで中断し、鹿島側が申し立てた不可解な調停が不調に終わったことから、区分所有者が建替えを求める訴訟にまで発展した。

 図面に明記された全階30カ所の梁が施工されていないことは鹿島建設も認めており、残る争点は、同社の手抜き工事による、「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ不足」である。

 原告側の主張によれば、鹿島建設が行った補修方法では、建築基準法施行令第79条に定められた、かぶり厚さを確保できておらず、法令を満たしていない状態がまったく解消されていないという。

 現状では、錆などの耐久性不足のみならず、構造上の付着強度不足など、深刻な状態となっており、地震による被害が生じる恐れがある。法令に定められたかぶり厚さを確保するためには、必要な厚みのコンクリート(または認定を受けたモルタル類)が上塗りされて部材の断面が大きくなっているはずであるが、現地で実測すると部材は大きくなっていないことが確認されている。現在のマンションの状況が、法令上または工学的にどのような問題を残しているのか、(協)建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事(構造設計一級建築士)に話を聞いた。

不適切な補修方法

 ――鹿島建設が実施したと主張する、コンクリートのかぶり厚さが不足した部分の補修方法は、建築基準法に適合し、法令に定められたコンクリートによる鉄筋のかぶり厚さと同等以上の効果がありますか。

 仲盛昭二氏(以下、仲盛) 鹿島建設は「補修済みであるから、鉄筋のかぶり厚さに問題ない」と主張していますが、補修は極めて不適切なものです。その理由は4つです。
(1) 鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さの補修方法が不適切であること。
(2) かぶり厚さ不足箇所に採用された材料が耐火構造に適合しないこと。
(3)かぶり厚さ不足にともなうコンクリートの中性化防止工事が不完全であること。
(4) かぶり厚さ不足箇所が、調査箇所以外にも多数存在する可能性があること。

 ――鹿島建設による補修工事が不適切な理由について、順に説明をお願いいたします。まず、1番目の「鉄筋に対するコンクリートかぶり厚さの補修方法が不適切」について、具体的に説明をお願いいたします。

 仲盛 鹿島建設がかぶり厚さ不足部分の補修材料として採用した材料は、建築基準法施行令第79条第2項に定められた国土交通大臣の認定を受けた材料ではありません。法令上および工学的に要求されるかぶり厚さは、建築基準法施行令79条第1項に規定する数値(柱・梁・耐力壁では3cm)以上必要ですが、補修は、かぶり厚さが不足したまま厚みを増すことなく行なわれており、法令に定められた厚みを満たしてないので、建築基準法に違反した状態となっています。 
 図面には「かぶり厚さ3cm」と明記されています。図面どおりに施工されていないので工事契約違反であり、建設業法に触れ、行政処分の対象となる可能性もあります。補修工事においても図面に示されたかぶり厚さが確保できていないので、違反状態は解消されていません。

(つづく)
【聞き手・文:山下 康太】

 

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