2024年12月23日( 月 )

福博遊技市場の挑戦者として成長~関東地方からの刺客『D』を迎え撃つ(後)

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(株)フェイスグループ

規制強化と事業の多角化

 同社は、パチンコホール「フェイス」各店に併設しているコーヒーカウンターや食べ処「柚ず」の運営を手がける(株)ロンハイ。大型トラックなど計40台を保有し、九州全域および全国を輸送範囲として、大手製造業の貨物輸送や公共事業による建設機械や建設資材・精密機械、時には蒸気機関車(SL)などの輸送を手がける、九州高速運輸(株)。不動産売買や太陽光発電の提案から施工(長崎県、岡山県などで実績あり)まで手がける(株)アイテムと、4社でグループを形成している。

 また、コーヒーカウンターや食事処、自動販売機などでは対応しきれていなかった顧客のニーズに対応する為、店舗敷地内にコンビニエンスストアを併設。「フェイス1111淀川」にはファミリーマート、「フェイス1500宗像」「フェイス1300小倉南」「フェイス850佐賀」にはポプラを併設しており、今後も随時コンビニの併設を進めていく方針で、コンビニ事業にも注力している。

 同社が事業の多角化による収益基盤の強化を進める背景には、年々、厳しくなる規制の影響がある。出玉性能が制限され、遊技機の魅力が減衰していく一方、スマホゲームの普及もあり、業界全体で客離れが加速しているのだ。

 そしてついに「決定打」ともいうべき規制強化が行われた。18年2月1日、「風俗営業などの規制および業務の適正化などに関する法律施行規則および遊技機の認定および型式の検定などに関する規則の一部を改正する規則案」(以下、改正風営法)が施行された。これに対応するため、施行前日の1月31日、パチスロ機の開発メーカーで組織される回胴式遊技機製造業者連絡会は機種開発のルールとなる自主規制を正式に発表した。

 発表された内容には、1回の大当たりで得られる出玉の上限が、パチンコは2,400個から1,500個に、パチスロは300枚以上から300枚までという制限に加え、最大差枚数2,400枚(勝ち額5万円未満)などの項目が盛り込まれていた。

 パチンコ・パチスロメーカーはこの基準に適合する台を製造・販売しなければならず、パチンコホールも、否応なしにその台を導入しなければならない。エンドユーザーが“新基準機”の遊技を通して、一撃で大量のメダルを獲得することは不可能となる。客離れは避けられない問題だ。

 改正風営法施行前に遊技場に導入された“旧基準機”は順次撤去されていくことになるが、実際に撤去されるまで認定日(ホールで営業する遊技機に対して許可を出した日)から3年の猶予期間が設けられている。遊技場では現在、一撃で大量の出玉・メダル獲得が期待できる旧基準機を改めて導入する動きが散見される。猶予期間を利用し、客離れを鈍化させたいのだろう。

 しかし、旧基準機の認定申請受付は18年1月末で終わった。どんなに長くても2021年1月末には旧基準機は遊技場から完全撤去されることになる。その時への備えとして、同社のようにほかの事業へ触手を伸ばすパチンコホール経営業者は少なくない。

 「フェイスはかなり長い間パチンコホールの運営一本でやってこられた珍しい企業ですが、新事業の立ち上げも計画されているようです」(関係者)。

D’STATION襲来!

新たな動きを見せ始めるD’STATION

 北九州から挑戦者として福岡・佐賀、さらには関西・関東エリアで遊技市場の開拓を進めてきた同社だが、今度は自らが挑戦を受ける側となった。同社の主戦場である福岡の遊技市場に攻め入ってきたのは、関東・東北エリアなどでパチンコホール「D’STATION」を展開するNEXUS(株)。

 NEXUSは、17年11月末、福岡・長崎エリアでパチンコホール「P-ZONE」などを展開していた(株)パラダイスからの株式譲渡を受け、九州初進出をはたした。NEXUSの17年6月期の売上高は2,424億円。売上高規模はフェイスの倍以上だ。

 同社に対抗するように、フェイスは17年末にかけて既存店舗のリニューアルを実施。注目されたのは、伊都エリアで運営していた「フェイス830伊都」を「メガフェイス1030伊都」へと大型店化させたこと。博多本店ではなく、伊都店への資金投下は、九州大学・伊都キャンパスの誕生により、学生を始めとする若年層の増加に期待がもてる同エリアでの新規開拓に向けた動きではないか。

 さらに、伊都店グランドオープン後の18年1月は、業界では有名なパチンコ・パチスロライターが連日同店へ実戦来店。知名度などによって上下するが、1度の実戦来店で20万~30万円のギャラが発生することを考えれば、同店だけで相当の宣伝費をかけたことが考えられる。

 一方のD’STATIONは、3と9のつく日を「絆プロジェクト」としてアピール。同プロジェクトの目的は、当日の来客数×50円をチャリティー基金として積み立て、災害発生時に被災地へ義援金として送るというものだが、当然遊技愛好者にとっては“激熱”デーとなる。

 それぞれの戦略を駆使して繰り広げられる顧客争奪戦。伊都エリアにおいては、日々の来店客数はフェイスが上回っている印象をもつ。日にちを明確にしたことが、D’STATIONにとって不利になったのかもしれないが、このまま手をこまねいて黙って見ているわけではなさそうだ。

 遊技人口が1,000万人を割り込むも、依然21兆円を超える巨大市場を形成する遊技業界。とはいえ、規制強化の影響から逃れることはできない。

 ホール運営企業間でのM&Aは加速している。メーカー間のそれも活発化してくるだろう。遊技市場の寡占化が進むなか、一体どのホール、どのメーカーが生き残るのか。福岡の雄、フェイスグループの動向が注目される。

メガフェイス1030伊都

SUPER D’STATION伊都店

(了)
【代 源太朗】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:福山 浩範
所在地:福岡市博多区博多駅南3-6-16
設 立:1983年3月
資本金:1,000万円
売上高:(17/5)約1,135億円

 

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