西日本フィナンシャルホールディングス、久保田勇夫会長新春経済講演会(7)
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FTAとEPAと関税同盟の違い
次に世界の貿易政策であります。レジュメの最初に「FTA〈EPA〈EU」と書いております。国際経済を勉強された方は、自由貿易協定(FTA)と関税同盟について勉強されたと思います。これは説明としましては、自由貿易協定とはその地域のなかでの関税は撤廃するということで、たとえば、今の北米のNAFTAがそうですが、これはメキシコ、カナダ、米国の3国間の取引に関税をかけないということです。この協定に参加していない、いわゆる第三国に対する関税をどうするかというと、カナダはカナダの関税率、米国は米国の関税率、メキシコはメキシコの関税率をかける。たとえば、日本からの自動車の輸入に対する関税は、カナダの関税と米国の関税、メキシコの関税はそれぞれ違ってよいというわけです。すなわち、この協定外の国からの関税はそれぞれの国が勝手にかけてよいということです。これが、いわゆる自由貿易協定です。これに対して関税同盟は域内の取引には関税をかけないということに加えて第三国に対する関税も同じ税率にするというものであります。今のEUがこのタイプであります。正確にいうと、EUは関税同盟プラスアルファなのですが。関税という点に着目すると、フランスに日本から輸入される車も、ドイツに輸入される車も全部同じ税率なのです。これが関税同盟であります。
では、それが現在の話とどういった関係があるかと言いますと、自由貿易協定とか経済連携協定とか、関税同盟とか、いろいろと言われていますが、自由貿易協定と経済連携協定というのは基本的に自由貿易協定なのです。経済連携協定というのは自由貿易協定に対して何らかのプラスアルファが付きます。その内容はそれぞれの協定ごとに違います。たとえば、ある国内手続きについて、この国からの輸入については省略してよいことにするとかいった話も一緒に約束するのが、経済連携協定であります。時々新聞などでこの自由貿易協定と経済連携協定を一緒にして解説しますと書いている理由はそういうことであります。
それに対して、関税同盟というのは第3国に対する関税が同じであるということで、この典型的な例がEUであります。ただ、EUはご存知のようにそういった経済だけの同盟ではなく、政治的な同盟でもあります。そういった貿易の取引も一体化しますし、政治も、外交も一体化しようとしているのです。では、一体化しないのは何かと申しますと、文化だと言っております。いずれにしましても、関税同盟というのは貿易取引についての一体化です。EUは関税同盟よりもさらに進んだもので経済的にも政治的にも一体化しようという野心的な計画であります。
(つづく)
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