西日本フィナンシャルホールディングス、久保田勇夫会長新春経済講演会(9)
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TPP11は画期的な成功 ―ただし本当に動くか?―
そういう中で日本の貿易政策であります。日本は今回、米国以外の国からなるTPPである「TPP11」の交渉を非常にうまくまとめ上げました。これには感心いたしました。少々脱線いたしますが、やはり旧通産省、現経済産業省の皆さまはこういうことはうまいのですねえ。今の政権の中枢には旧通産省出身者が多い。話は戻りますが、このTPP11は、TPPを離脱した米国を除いて、再度TPPを募ろうというものです。日本が合意した米国を含めた12カ国で合意したTPPではいくつか感心しない点があると以前申し上げました。1つ目は争訟手続きについては少々変だということと、2つ目は文化とか社会活動とか本来経済が第一としない領域まで約束している点です。いろいろと異論はありますし、私は今回のTPP11が完全だと思いませんが、いずれにしても米国が離脱しこれからどうするかという時に、それ以外の国でまとめるというのは非常に野心的な計画であります。
これはうまく行くかなと心配しておりましたが、うまく行きつつあります。しかも、現在言われているのは、今年3月に署名し、11月に発効させようというのです。この協定が動くためには、各国が署名して、それをそれぞれの国が議会を通さなければなりません。これが本当にうまく行って現実にこの制度が動き出すのかという点については、私は多少気を付けないといけないと思います。なぜかというと、カナダであります。カナダは昨年11月の閣僚声明の際に賛成すると言っていながら結局賛成しなかったのです。これはこの背後には米国がいるのではないかという見方があります。米国は先行されると困るのですね。そういう前例もあるので、今回のTPP11も署名直前まで来ていますが、またどこかの国が直前に嫌だと言い出すかもしれませんし、あるいは署名をするけれども議会にかけない可能性がないわけではないとみています。長年この手の交渉をやってきた者として、そういう可能性を否定できないと思うわけです。
さらにいえば、最近トランプ大統領が「米国に有利であれば、またTPPに参加する」と言っているのも、TPP11が動き出すことについてのけん制だとも見られるわけです。そういう意味でTPP11は非常に画期的な成功でありますけれども、本当に動き出すまで安心はできないと私は思います。ただ、これは現段階では少数説だと思います。
(つづく)
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