積水ハウスの株主総会、人事案を可決~阿部会長69%、稲垣副会長73%、賛成率の読み方(後)
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機関投資家に求められる議決権行使の個別開示
金融庁は2014年のスチューワード・シップ・コード(受託者責任原則)の導入によって、生命保険会社や信託銀行など機関投資家に「物いう株主」へと変化することを求めた。それまでは、機関投資家である金融機関と企業との取引やグループ関係が重視され、経営者側の提案に賛成するケースがほとんどだった。
金融庁は2017年に、スチュワード・シップ・コードを改定。機関投資家に対して、保有株の議決権行使内容を個別開示するようを求めた。コードには強制力はないため、日本最大の機関投資家である日本生命保険は当面開示を見送るものの、機関投資家の間で議決権の個別開示の動きが広がってきた。議決個別開示の衝撃は強烈だった野村ホールディングス傘下の投資信託会社、野村アセットマネジメントは昨年7月、4~6月開催の株主総会での議決権行使結果を公表した。
取締役選任議案では不祥事が発覚した企業の経営トップに反対した。東芝の綱川智社長と平田政善専務の選任に反対したほか、三菱自動車の益子修最高経営責任者(CEO)の選任にも反対した。
子会社で会計不正が発覚した富士フイルムホールディングスの取締役選任議案では、古森重隆会長、助野健児社長ら3人に反対した。株主総会では、古森重隆会長の選任議案への賛成が83.26%、助野健児社長の賛成票は80.55%にとどまった。ほかの取締役候補が90%以上の賛成を得たなかで、反対票の多さが際立った。
安定株主と見なされていた機関投資家が、会社提案の取締役選任案に反対票を投じたことは上場企業の経営者に衝撃を与えた。機関投資家が喉元にアイクチを突き付けることがわかったからだ。機関投資家は阿部会長に賛成票を投じた!
積水ハウスの株主構成は、金融機関40.87%、証券会社6.42%、外国人27.51%、そのほか法人11.00%、個人・そのほか14.20%(18年1月31日決算期末現在)。
助言会社の影響を受ける外国人や、金融機関のうち生命保険会社や信託銀行などの機関投資家が反対票を投じるのではないか、と推測されていた。ふたを開けて見れば、下馬評を覆すものとなった。阿部会長の賛成は69.03%で、稲垣副会長のそれは73.44%。仲井社長の賛成率95.11%を始め、ほかの取締役が94%以上の賛成を得ている。取締役選任は賛成が9割を下回ると低いとされる。2人の賛成率はかなり低い。
しかし、阿部会長の賛成率が7割弱あったことは、機関投資家のほとんどが賛成したと推測される。このことは意外感をもって受け取られた。機関投資家は、情報開示が十分といえない経営トップに賛成票を投じたかを、個別開示で説明を求められることになろう。この日の株主総会では、地面師詐欺事件の責任問題には触れなかったという。お家騒動が収まるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
(了)
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