2024年11月25日( 月 )

心魂を傾けるイノベーションセンターとして中小企業の発展を支え続ける(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

富士経営グループ

自らが事業をつくる

 崎田代表が提唱するイノベーション志向は、顧客に対してコンサルティングするだけでなく、同社グループが自ら実践している。「口だけではなく、自社でもイノベーション志向の事業をつくり上げていくことで、率先してビジネスモデルを示します」(崎田代表)。

 同社グループは日夜、新たな事業構築の挑戦を続けている。このチャレンジのなかで、具体化している3つの新事業を紹介する。

 まずは、(一社)日本訪問看護在宅支援協会を設立し、崎田代表が自ら理事長に就任したことだ。『在宅看護で地域に貢献しよう』というスローガンを掲げ、全国各地に訪問看護ステーションを開設し、その運営支援を行うという事業だ。「政府は、現在150万床を超えている病院のベッド数を2025年までに約20万床削減し、約115万床を目指すという数値目標を示しました。高齢化が進むなか、増え続ける医療費を抑制することが目的です。しかし高齢者の数は増え続けますから、要するに『自宅か介護施設で臨終を迎えてくれ』という考え方です。我々はこの現実を受け入れて、今後どうすることがベストなのかを熟考して、高齢者を支援する協会を設立したのです」(崎田代表)と、今後高齢者医療・介護をめぐる厳しい状況を認識したうえで協会を設立した。

 同協会は、訪問看護ステーションを開設した地域で、在宅医師・歯科医・薬局・理美容師、そして訪問看護師やケアマネジャーからなる専門家のチームを形成する。さらに高齢者施設の開設と運営のサポート、高齢者を支える一般企業を募りながら、同協会が中心となって医療関係を始め各分野のプロフェッショナルが、その地域の高齢者が安心して暮らせるための仕組みをつくっていく。

 2つ目は、グループ会社の(株)富士情報デザインが開発した新商品『香り改革プラス1』。主に人間や動物の糞尿に由来する悪臭対策に大きな効果を発揮する製品だ。この製品は、「化学的・物理的・生物学的・感覚的」という4つの消臭法をすべて兼ね備えており、糞尿特有の悪臭を抑えるだけでなく、柑橘系の程良い香りが広がる画期的な製品である。使用方法は簡単で、糞尿に適量スプレーするのみ。すでにバキューム事業を行う企業に依頼して、熊本県内の汲み取り式トイレと建設現場の仮設トイレで実験を実施。その結果、臭気が消えて、関係者すべてが「今後、本格的に採用したい」と即決したという。さらに、佐賀県内の医療関連施設では、病室内でのトイレ処理が必要なケースにて、処理後室内の空気清浄を2時間実施しても悪臭が残る課題があった。この室内へ適量スプレーを実施したところ、瞬時に悪臭がなくなったうえに、心地よい香りがあり、快適性が増した。「期待以上の効果・効能があった」として、すでにリピートされている。今後は、病院や農家、そして建設業関係への市場開拓を行う計画で、「慢性的な悪臭のある環境には劇的な環境改善が実現するでしょう」(崎田代表)と期待が高まっている。

 3つ目は、(株)富士エコ研究開発が製品化した「廃食用油発電システム」だ。久留米工業大学とテラテック社との共同開発で、バイオマス発電のための廃食用油を再生し、燃料として活用するシステムである。通常、廃食用油をバイオマス燃料として使用すると、脂肪酸やグリセリンなどの不純物が生じて発電機の燃料パイプが詰まるなどの支障をきたす。その不純物を除去できるシステムを約1年かけて開発した。すでに久留米工業大学では同システムを採用し、自家発電を実施してその効果を実験中である。今後は、食用油を使う飲食業界に対し、処分コストがかかる廃食用油を自家発電システムへ導入することで有効活用を呼びかけるなど、自家発電を検討する事業者へPRしていく。

 以上のような同社グループが手がけるイノベーション志向を徹底した3つの事業は、現在の時流に沿って社会貢献度と市場性が高く、地域活性化と新たな価値創造をもたらすビジネスモデルである。これまで同社グループは、あらゆる可能性を求めながらイノベーション志向の事業づくりを自ら着手し続けてきた。

 過去、イノベーションを目指したものの、失敗した事例は数多く存在する。それでもイノベーションを継続するのは、「我々が自ら新しいビジネスモデルをつくることが、一番のコンサルティングになります。それこそが正直で誠実なコンサルであります。今後もこの姿勢を貫いていきます」(崎田代表)という思いがあるからだ。

 同社グループは今後、多くの中小企業が喫緊の課題としている事業承継をテーマにしたビジネスの構築と、健康にアプローチした抹茶と桑の葉をブレンドした粉末製品の研究開発など、イノベーション志向によるビジネス創造に挑み続ける。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:崎田 松男
所在地:福岡市中央区天神2-14-8
設 立:1976年10月
資本金:1億3,500万円
TEL:092-781-7300
URL:http://www.fujikeiei.net

<プロフィール>
崎田 松男(さきた・まつお)
 福岡を中心に中小企業の再生・発展などを総合的にサポート。「福岡における企業再生コンサルティングのパイオニア」と評される。

 
(前)

関連キーワード

関連記事