2024年11月28日( 木 )

カンボジア地雷撤去キャンペーン、20周年を迎えて(4)

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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
大谷 賢二 氏

 CMCは、2010年、「CMCトゥールポンロー中学校」の落成に際しカンボジア政府より2度目の「国家建設功労第一等勲章」を授与されました。また、これまでに国内でも社会貢献推進財団より「社会貢献賞」、福岡市より「福岡市民国際貢献賞」、アジア人権基金より「アジア人権賞」などを日本人として初受賞することができました。これらは、CMCの活動が世の中に認知されるとともに、一定の評価を受けたものとも思われますが、今後ともより真摯に初心に帰って活動に精進したいと思います。

 結成から20年、CMCは一般財団法人となった後も、全国の支援者の皆さまの善意、とくに小・中学校の子どもたちからの支援がどれだけ私たちの励ましになったかわかりません。同時にカンボジア現地の子どもたちの笑顔に支えられここまでくることが出来ました。何よりも忘れてはならないのは、ボランティアで各地の事務局を支え、それぞれの地でCMCの活動を展開し、カンボジアの厳しい現状、地雷被害の悲惨さを訴え運動を形作ってこられた全国の仲間、そして厳しい環境の中で文字通り身体を張って任務を遂行してきた現地駐在員の皆さまの愛と勇気と行動力です。

 私は、この20年間の活動の中で、普通では得る事の出来ない多くの感動を体験してきました。今回その中のいくつかをご紹介したいと思います。

 まずは、1998年の結成以来、CMACやMAGなどの地雷撤去団体やエマージェンシーの様な病院を通じた現地支援が主だったCMCが、本格的に地雷原の村に関わりだしたのは2002年カンボジア人で地雷撤去団体MAGの元バッタンバン担当職員だったシモーヌを現地責任者としてバッタンバンに現地事務所をつくり、クバルムース地区に関わってからです。その村は、ポルポト軍とベトナムに後押しされた政府軍との激戦区で多くの地雷が残され、土地は痩せ、農業の生産性は極めて低く、それに加え干ばつが襲いかかり住民の生活は極貧を極めていました。しかも学校はなく、子どもたちは教育も受けられない。何から解決していくか村人との話し合いを続けた結果、村の将来を担う子どもたちの教育が最も重要だということになり学校建設がCMCに請願されました。

 しかし私たちにとって学校を建てるという事は、たやすいことではありません。地雷撤去や被害者支援を継続したままでの建設になるからです。その資金を得るために報道各社に協力をお願いし、街頭キャンペーンなども展開しました。資金集めに苦労している時、突然電話が鳴りました。福島県のお寺の住職からでした。

 「カンボジアの子どもたちの役に立ちたい。私はこれまで寺の住職として人に説教を続けてきたが、振り返ってみると自分自身が本当に人の役に立つことをしてきたかどうか自信がない。今からでも少しでも何かできればありがたい。新聞で貴方の事を知り、協力させていただきたい。本来なら自分もカンボジアに行って子どもたちの顔を見たいのですが、病気で歩くことが出来ない。顔も見た事がないあなたを信用して送金するので、ちゃんと使っていただきたい」という事でした。その安倍さんという住職からは、第8次スタディツアーの直前に入金があり、その額は学校建設資金の半分にもあたるものでした。

 ツアー一行はクバルムース地区で村人や子どもたちの熱烈な歓迎を受けました。そして、地区内にあるボップイ村を建設予定地として決定し、帰国の途に就きました。帰国後、早速建設予定地の写真や村の子どもたちのビデオ、感謝状などを持って、福島へと向かいました。ところが、ご自宅に電話を入れると、すでに福島県立大学医学部に入院されたとのこと。病室にうかがうと安倍さんは酸素マスクをあてられとても苦しい様子でした。安倍さんの手を握り感謝の言葉とボップイ村の様子を伝えると、苦しみながらも頷いておられ、目には涙が光っていました。奥さまにお話を聞くと、私がカンボジアから戻るのを心待ちにしておられたとのこと。一連の報告を奥さまにし、感謝状をお渡しして病院を後にしました。翌日胸騒ぎがして電話を入れて愕然としました。昨日深夜に息を引き取られたとのことでした。初対面が、最後の出会いとなったのです。私は大きな衝撃を受けるとともに、運命的なものを感じずにはいられませんでした。建設する学校に安倍さんの名前を残しカンボジアの子どもたちに安倍さんの想いを伝えよう。そうしてできたのが「CMCボップイ安倍小学校」なのです。

 前述した通り、「ボップイ安倍小学校」は老朽化のため三好不動産さんのご支援により新築され、現在「CMCボップイ三好小学校」として安部さんの遺志が引き継がれています。

(つづく)

▼当日の講演の様子▼

 
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