2024年12月05日( 木 )

ド派手なセレブ生活から原点回帰へ(4)~(株)ストーンマーケット

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 天然石アクセサリー販売と名物社長のド派手なセレブ生活で一世を風靡した(株)ストーンマーケットだが、近年は業績低迷からリストラを余儀なくされている。メディア露出もすっかり影を潜め、地道に原点回帰を目指しているようだ。

宴の後の寂しさ

 同社が事業の多角化で、とくに力を入れたのが飲食事業だ。大名の無国籍カジュアルダイニング「mu-tata(ムータタ)」、赤坂のレストラン・バー「GOLD(ゴールド)」、中洲のバー「W the Bar(ダブリュ・ザ・バー)」、福間の「Stellar Beach Café(ステラ・ビーチ・カフェ)」、百道浜の「Blue Reef Café(ブルー・リーフ・カフェ)、中洲では本格和食の「美食・和ダイニング きらら庭」、16年8月にはミュージシャンのGACKTがアドバイザーを務める立ち食い焼肉店「厳選 神の赤肉 親富孝通り店(FC店)」をオープン。なかでも豪華な内装の「GOLD」は、セレブパーティー会場の代名詞的な存在だった。

 飲食事業以外にも高品質スパークリングワインをオリジナルブランドとして販売する酒類事業、社会貢献事業の「HAPPY POWER STONE」プロジェクト、ウェイクボードの普及を図るマリン事業なども手がけてきた。

 問題は、こうした本業以外の事業が、経営理念や緻密な事業戦略に沿ったものだったかどうかだ。高収益のビジネスモデルで成長したがゆえに、どんぶり勘定で趣味的な要素の強い事業展開に走った印象だ。当然ながら無計画な事業の多角化は失敗に終わる。最も力を入れたはずの飲食事業だったが、上記の店は現在では1つも残っていない。

 利益率の高い天然石アクセサリー事業で成功し、その勢いで飲食事業にも進出したが、結果的にリストラせざるを得ない状況に追い込まれた。本業の高収益を背景にした拡大・多角化路線は逆回転の負のスパイラルに陥った。一般的に、本業が悪くなって不採算事業を整理すると、本業の赤字プラス整理損のダブルパンチに見舞われる。17年3月期の大幅な赤字の内容は不明だが、ダブルパンチを食らった可能性が高いのではないだろうか。

 ここまでの流れを推測すると、本業の業績低迷に飲食事業の失敗が追い打ちをかけ、膨らんだ借入金の返済が苦しくなった。そこで銀行の協力(たとえばリスケ)を得ながら延命策を取り、事業構造の変革(リストラ)を進めた。経営上の無駄を削ぎ落し、派手なセレブアピールもやめ、財務リストラも進めた。その一環でストーン社とナカムラ社を合併し不良資産を処理した。日銭商売の利点(キャッシュフローの良さ)を生かし、原点回帰で立て直しを図っている、というところではないだろうか。

 不動産売却の噂も聞かれたが、取材時点では売却の確認は取れなかった。また最近では新規出店を行うなど前向きな話も聞かれ始めている。

 銀行の協力もあり倒産を懸念するような時期は乗り越えた印象だ。一方で、事業環境は厳しさを増し、原点回帰の経営戦略で回復軌道に乗れるかどうかは不透明だ。少なくとも以前のような経営スタイルは通用しないだろう。広告戦略の一環だったとはいえ、「下品な成金趣味」と揶揄されたセレブアピールに嫌悪感を抱いた人も多い。メディアを利用してつくったブランドイメージも、ブームが去り経営不振が表面化した状況では、むしろマイナスイメージにしかならない印象だ。同社はすでに「宴の後」の雰囲気を纏う過去の企業になりつつある。

(了)
【特別取材班】

 
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