2024年12月25日( 水 )

若手が率いる100年企業~同族ではなく、生え抜き社員に経営のバトンを(前)

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有澤建設(株)

ガラス張りの社長室、社風表す新事務所

 創業から100周年を迎えた2017年4月、念願の新社屋が完成した。事務所のある1階は仕切りのない開放的な部屋で、室内に一歩入れば全体を見渡せる。奥の社長室は仕切られてこそいるが、透明ガラスで室内の様子をうかがい知ることができる。「本社にお邪魔すると、工務と営業、事務の一体感を感じる」と語るのは協力会社の1社。この事務所のつくりに有澤建設の社風の一端が表れている。それでも木下英資代表の理想は高い。「小さな問題は、どんな会社にもある。コミュニケーションが足りないから、発生するミスもある。とくに部長クラスには、もっとコミュニケーションを密に取ろうと課題を与えている」という。

 同社の創業は1917年。2004年8月から代表を務めていた有澤廣己氏は、10年10月に代表取締役会長に就任。同時に元代表の子息である木下現代表へバトンタッチした。施工実績をみると、マンションやホテルなどが目立つが、特定の建物に特化することなく、市場や武道館などやや特殊な案件にも挑戦していることがわかる。近年の受注は順調で、とくにここ2、3年の売上高の伸びには目を見張るものがある。数年前まで、20~30億円台の売上高だったが、今やその倍以上の売上高を計上している。もちろん市況の恩恵もあるが、それでも売上高を倍増させているゼネコンはそれほど多くない。好調の要因について、木下代表は社員の平均年齢が若いことを挙げている。代表も部長も40代だ。建設業界は一般的に、旧態依然で、なかなか変化しないものだが、同社の社風はいいものは残し、変えるべき部分はどんどん変えるというもの。このような目に見えない部分が顧客から評価されているのだ。18年8月期はさらに売上を伸ばし、完工高で80億円を上回る見込みだ。

有澤建設(株) 木下 英資 社長

 「一昔前に比べると、リピーターが確実に増えている」という木下代表の述懐を裏付ける声が取引先から聞かれる。「日ごろより非常に柔軟に、迅速に対応してくれる。以前、着工直前に建設会社から施工できないと断りが入り、困っていたところ、有澤建設さんに相談したら、わずかな時間で快諾をもらい、着工に間に合わせることができた。打ち合わせにも、社長自ら同席してもらえることが多く、安心してお願いできる」という。また別の協力会社は「物件数が非常に多く、信頼度の高い施主からの紹介が生きている。無理難題は言われない。後手を踏むことはさせない。変更や追加工事も柔軟に対応してくれる」と高評価。たしかに木下社長は「現場員を褒められることが多い」と自社の特徴を答えてくれたが、まさにこれが紹介と信頼を生む源泉なのだろう。紹介は主に設計事務所や不動産業者からだ。個人オーナーについても、自ら新規営業を展開するわけではない。今の時代、会社の看板だけで仕事を取れるほど楽な時代ではない。取引先と直接対峙する、営業や施工の現場員の評価が高く、紹介やリピートにつながっている。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下 英資
所在地:福岡市博多区博多駅南4-4-12
設 立:1967年9月
資本金:9,000万円
TEL:092-433-1811
URL:http://www.arisawa.jp

<プロフィール>
木下 英資(きのした・えいすけ)
 1971年福岡県生まれ。95年に早稲田大学を卒業後、西日本旅客鉄道(株)(JR西日本)に入社。2001年、有澤建設(株)に取締役社長室長として入社。05年に常務取締役などを経て、10年代表取締役社長に就任した。

 
(後)

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