昨今M&A事情(3)~RIZAPグループ、「プロ経営者」カルビーの松本晃会長をCOOに招くワケ(前)
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「結果にコミットする」のCMで知られるトレーニングジム大手のRIZAPグループは引き取り手がない経営不振企業にM&A(合併・買収)攻勢をかける。傘下に収めた企業はなんと64社。ジムの客には減量を促すものの、会社はメタボリックシンドローム症候群。そこで瀬戸健社長は起死回生策を打ち出す。「プロ経営者」に経営を任せることにしたのだ。
9期連続で最高益を達成した「プロ経営者」
RIZAPグループは5月28日、カルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)である松本晃氏(70)を代表取締役兼最高執行責任者(COO)に招くと発表した。6月24日の株主総会後の取締役会で正式決定する。創業者の瀬戸健社長(40)はCEOに就く。
松本氏は伊藤忠商事出身。商社マンから医療機器メーカー、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人の社長を経て、09年にカルビーの会長兼CEOに就いた。創業家出身の3代目社長の松尾雅彦氏から三顧の礼をもって経営トップに迎えられた。
高コスト体質にあえいでいた同社を立て直し、11年東証一部に上場。17年3月期まで9期連続で最高益を達成し、売上高は2倍、営業利益は3倍に成長させた。“松本マジック”といわれ、「プロ経営者」と評された。
3月27日、カルビーは松本氏の退任を発表した。松本氏を招いた松尾雅彦氏が2月12日に76歳で亡くなったことで、プロ経営者の役目は終わったと判断したようだ。退任会見で「声をかけてもらって一緒にやってきた松尾さんがいくなって、自分も潮時だ」と語った。
退任を発表した日、「新たな挑戦の場を求める」と公言したことから、すぐ多数の会社からオファーがあった。そのなかから松本氏が次の舞台として選んだのはRIZAPだった。
RIZAPの瀬戸健社長は松本氏に7回面会して、招聘を承諾してもらったという。「三顧の礼どころか七顧の礼だ」とメディアは報じた。
M&Aの対象は経営不振企業だ
瀬戸健氏は福岡県北九州市のパン屋の息子に生まれた。偏差値30台から猛勉強して明治大学商学部に入学。大学在学中にパソコン教材販売代行を起業。営業に向いていると自覚した彼は大学を中退。24歳のときに健康食品の通信販売会社、健康コーポレーション(RIZAPグループの前身)を設立。06年札幌証券取引所の新興市場アンビシャスに上場をはたしたが、その後、何度も倒産の危機に直面した。
12年に個別指導のトレーニングジムRIZAP(ライザップ)事業を立ち上げた。これが大当たり。18年3月末時点で、国内147店、海外7店を展開。累積会員は10万6,000人だ。
同社は創業当時から通販商品の種を見つけるため、買収を重ねてきたが、トレーニングジムが当たってからは、M&Aの爆走に弾みがついた。
M&Aの対象は、引き受け手のいない経営不振企業ばかりだ。朝日新聞(18年5月18日付朝刊)は、瀬戸氏のM&Aの手法をこう報じた。
〈不振企業でも嫌がらないから、銀行や証券会社が案件をもち込む。毎月10社ほど資産査定をし、1社前後を買う。(中略)(今年3月サンケイ)リビング新聞の交渉と同時並行してサッカーJIの湘南ベルマーレの経営権を取得。CD販売の新星堂などを展開するワンダーコーポレーションを手に入れた。〉
RIZAPグループが傘下に収めた企業は64社。うち上場企業が9社に上る。
(つづく)
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