2024年11月29日( 金 )

米朝首脳会談に寄せる期待と今後の展望(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 朝鮮半島に大きな変化をもたらすかもしれない米朝首脳会談は結局シンガポールで開催されることになった。米ホワイトハウスは4日、米朝首脳会談を6月12日午前9時(現地時間)にシンガポールで行うと正式に発表した。会談場所はセキュリティなどを理由にシンガポールの有名なリゾート地であるセントーサ島になった。

 サラ・サンダース、ホワイトハウス報道官は、今回の米朝首脳会談に備えて軍、セキュリティ、医療関係者などがシンガポールに派遣され、会談の準備が進められていると伝えた。

 北朝鮮は、もともと首脳会談の場所として強く平壌を希望していたようだが、首脳会談の場所は結果的に第3国であるシンガポールに決定された。首脳会談が平壌ではなく外国で行われる場合、金委員長は飛行機で移動しないとならないため、拉致や暗殺などのターゲットになる恐れがある。また金正恩委員長が国内にいない間に、不穏な勢力による行動などが北朝鮮では心配されていたようだ。しかし、そのような状況にも関わらず、北朝鮮の現在の危機を乗り越えるため、金委員長はシンガポール行きを選択している。

 今回の米朝首脳会談が成立するまでには、さまざまな紆余曲折があった。4月27日の南北首脳会談開催後、6月の米朝首脳会談の開催が予定されるなど、北朝鮮との関係改善に韓国では大きな期待が寄せられていた。ところが、両国が水面下で首脳会談の合意を引き出すために折衝を重ねる段階で、徐々に非核化の実現に対する米朝の意見の相違が露呈した。

 米国は先に核を放棄するという「リビアモデル」を北朝鮮に要求したが、北朝鮮は段階的な非核化を主張していた。ジョン・ボルトン大統領補佐官のリビアモデル発言など、米国政府の強硬な態度に対して、北朝鮮はかなり反発し、金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官は米国を激しく非難する声明を出した。

 このような流れのなかで、トランプ大統領は今の時期に米朝首脳会談を開催するのは適切ではないと、首脳会談の延期を知らせる旨の書簡を金委員長宛に送った。

 この予想外の展開に驚いた文大統領は、板門店の北朝鮮側に行って金委員長と会うこととなった。2時間に渡る電撃的な南北首脳会談が開催され、文大統領は米朝の仲介に尽力した。この努力が功を奏して、紆余曲折の末、12日の米朝首脳会談は予定通り行われるようになった。

 それでは、どのような背景で米朝首脳会談は行われるようになったのか。まず、北朝鮮の状況から見ていこう。北朝鮮は今まで核開発と経済発展を、国家戦略の2本柱にして国の発展を進めてきた。核開発は、ほぼ完成に近づいているが、経済制裁によって経済は崩壊に陥りかねない状況であった。核は交渉のカードにはなっても、核をもっているからといって体制が維持されるわけではない。それに、核兵器を使うことは、こちら側も破滅を覚悟したうえでそれを使用しないといけない。

(つづく)

 
(後)

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