【韓国経済】半導体偏重の産業構造の危うさ(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
半導体産業、利益率に格差
韓国における半導体偏重の産業構造の2つ目の課題は、これほど、半導体産業の比重が大きくなっているにも関わらず、産業のなかでは格差が生じていることだ。韓国には半導体関連の企業は221社ほどあるが、サムスン電子やSKハイニックスの営業利益率は43.3%であるのに対して、中堅・中小企業の営業利益は3.4%に過ぎない。中堅・中小企業でも、5社のうち1社は赤字を計上しているようだ。このように産業内でも、一部の企業に恩恵が集中していることも課題として指摘されている。
半導体産業は自動化と大型化で、効率性は大幅に増大しているが、韓国経済に対する寄与度は、それほど高くないという指摘もある。そのほかにも、半導体の素材や装置の海外依存度がまだ高いこと、韓国政府が最近、半導体の研究開発費を削減したことなども課題として指摘されている。
脅威となる中国の追撃
上記の要因だけでなく、半導体産業の未来を最も懸念させる要因がある。それは中国の追撃である。中国は世界工場と言われて久しい。今までの中国企業はコア部品である半導体などを海外から輸入して製品を製造し、全世界に輸出していた。ところが、そのモデルは成長の限界に達しつつある。それにチャイナイノベーションと言って良いほど、IT部門などを中心に、世界をリードする企業が中国で誕生している。また、次世代産業といわれる人工知能などにも中国は莫大な投資をしている。
しかし、このような次世代産業のコア部品はやはり半導体である。世界半導体の約60%は中国に需要がある。しかし、中国アキレス腱は半導体で、半導体を輸入に頼ったままでは、世界の覇者になれないことに中国政府は気づいた。最近米中間で発生している貿易戦争も、実は中身は半導体をめぐる戦争で、中国の新興IT企業であるバイドゥ、アリババ、テンセントが上記のFAANGに挑戦状を突き付けつけていることだと解釈する向きもある。
2013年、中国の半導体輸入額は石油の輸入額より多くなった。半導体の輸入額は2,322億ドルで、石油の輸入額である2,194億ドルを追い抜いた。このような状況を打開するために、中国政府は、現在の半導体自給率約14%を、2025年までに70%に高める計画を立てている。これを実現するために、中国政府は2025年までに1兆元(160兆ウォン)を投資することにしている。この数字が如何に大きな数字であるかは、サムスン電子が今まで10年間半導体に投資してきた金額の合計が110兆ウォンであることを考えると良くわかる。
中国のこのような動きが韓国の半導体産業には一番脅威になると予測されている。中国の追撃には、恐ろしい前例があるからだ。
鉄鋼、ディスプレイなどでは、中国政府の支援をバックに、中国企業は大躍進を遂げている。莫大な投資によって、供給過剰を市場に起こし、価格が暴落し、資金力をもっている中国企業だけが生き残って、シェアを取るという仕組みだ。最も怖いのは、中国は市場をもっている点だ。中国は自国産業を育てるため、どんなことでも敢行するだろう。半導体の好調はいつまで続くかわからない理由である。
(了)
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