2024年11月24日( 日 )

「子ども食堂」に独居高齢者がいっぱい(後)

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大さんのシニアリポート第67回

食事風景

 問題も多い。「子ども食堂」を利用する子どもや親が、周囲から差別的な目で見られること。「ぐるり」でも、あからさまに「子ども食堂」とうたわず、「ぽかぽか広場」という名称にして、「宿題も兼ねる」という条件で、大学生に先生役を担当してもらっているのも、そうした差別的な目線を意識してのことである。
 市内にある7つの「子ども食堂」のなかには、困窮とは無関係に「誰でも利用できる食堂」というスタンスで運営しているところもある。複雑な背景を意識しての配慮だろう。でも、「本当に利用してもらいたい子どもがきているかどうか」悩むところだ。

 「子ども食堂」周辺には、必ず利用する子どもが通う小学校がある。生徒の家庭状況を知り、ピンポイント的に「声かけ」を実施しようと思うのだが、肝心の小学校が個人情報を理由に開示を拒否する。一方で下校児童の見守りやさまざまな支援を学校区域の住民に要請することが多い。矛盾を感じる。
 利用する子どもの親も顔を見せることがある。「食育」という視点から「子ども食堂」を見直してみると、私には、親が子どもたちに食事をつくるべきだと思う気持ちがある。ボランティアと一緒に、学びながら料理することを体感する。そこに「子どもに自分がつくった料理を振る舞うことで子どもの喜ぶ顔を見る」という期待があったのだが、実情は違った。料理することに喜びを感じることがない。当然、義務感も生まれない。学校給食が子どもの唯一の食事であること、食事代としてテーブルに百円玉二枚を置くことになんの疑問を感じない親がいるのである。栄養を意識して買い物をする子どもはいない。

 「子ども食堂があるから利用している」と、利用する子どもたちへの他人のヘイト的視線を気にしない親もいる。精神的不安を抱える長女が不登校になり、釣られるように長男も不登校。次男も不登校気味で、「ぐるり」の「子ども食堂」にも顔を見せなくなった親子。訪ねた社協の相談員が、「台所を使った形跡がないくらいきれい」といった。
 母親は子どもたちに食事をつくるということを放棄しているのだろう。生活保護受給者になったと聞いた。最低限の生活は確保されたという安心感があるものの、就労しようという気持ちは失せたようだ。自分が子どものときに親に同様の仕打ちを受けた体験をもつといわれる「負の連鎖」なのだろうか。最近でも東京目黒区で起きた「子どもの遺棄事件」などのように、親が本来、子どもに抱くはずの愛情を抱けない親がいるという事実を無視できない。そういう意味では、「子ども食堂」が必要とされる子どもたちが利用してくれることを祈るばかり。「子ども食堂」を通して地域の子どもたちと顔見知りになるにつれ、各家庭の状況が確実に見えてくる。

食事中の高齢者と女子大生

 さて、粗食・孤食の高齢者の問題が残る。「高齢者は社会的にも『終わった人』だから」という「高齢者不要説」を唱える高齢住民もいる。彼は「子ども食堂」には大いなる期待を寄せるが、「老人食堂」には否定的だ。前出の足立己幸氏の著書『65歳からの食卓』にもみられる「共食」の有益性、「粗食・孤食」の不利益性を考えたとき、「老人食堂」は看過できない。その2つを同時に解決する方法として「朝カフェ」を提案したい。

 朝7時~9時。朝食のみ。当初は和洋折衷。「ぐるり」で用意するのは、基本ご飯と味噌汁。ハムエッグなどの主菜はその都度考える。挽き立てのコーヒーは飲み放題。米とパンは社協のフードバンクを利用。牛乳などの飲み物は各自持参。 
 利用者に制限はなく、乳幼児と母親、子どもから学生、サラリーマン、高齢者など、誰でも利用可能。食事代(利用料)は小学生まで100円。中学生以上300円。
 月2回(月曜)からスタートし、状況によって毎週月曜へと開催日を増やす。孤食中心の人には、食後の会話も栄養になるだろう。問題はボランティアと資金だが、すでに名乗りを上げてくれている住人がいる。資金の基本は利用者が支払う食事代だが、場所代は無料(「ぐるり」の賃貸料込み)、食器などは「ぽかぽか広場」と共有。材料費もそれほどかからないと思う。保健所の問題があるが、「子ども食堂」が黙認されている以上、「朝カフェ」も問題ないと思う。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

 
(67・前)

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