2024年11月24日( 日 )

台湾市場・消費者動向の「今」を考える!(前)

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 東京から約4時間、福岡からはわずか2時間30分のところに台湾本島は位置する。面積は36,193km2で九州よりやや小さく、そこに約2,300万人が住んでいる。教育に熱心で、国語(中国語)識字率は98%を超える。親日と言われ、2万人を超える在留邦人が住む。では、今の台湾市場・消費者動向はどのようになっているのであろうか。
 世界最大級のICT国際見本市「COMPUTEX Taipei 2018」(6.5‐9)で渡台した際、東方線上股份有限公司の蔡鴻賢執行長(社長)に聞いた。東方線上は長年、台湾の消費者研究を牽引してきたリーディングカンパニーである。日本企業との取引も多く、蔡執行長は日本におけるビジネス経験があり日台双方に明るい。同席は今回コーディネートいただいた元台北市日本工商会・台湾日本人会総幹事の山本幸男氏(現・(公財)日本漢字能力検定協会台湾アドバイザー・(財)台湾協会台湾連絡事務所長)である。

東方線上股份有限公司 執行長 蔡 鴻賢 氏

台湾の消費者研究を牽引するリーディングカンパニー

 ――本日はお忙しい中、お時間を賜りありがとうございます。まずは読者に、東方線上、そして蔡執行長と日本との関係について教えていただけますか。

 蔡鴻賢氏(以下、蔡) 東方線上股份有限公司は現董事長(会長)でトレンド予測の専門家である詹宏志氏(PC Homeグループ会長)と私の2人で2000年に設立しました。主に台湾で消費者動向調査・マーケティングリサーチに関する業務を行っています。

 EOL(東方線上消費者行動研究グループ)の事業内容は以下の4つです。

(1)東方線上股份有限公司 ― 定量・定性の専門リサーチ、調査研究、データ分析
(2)東方快線(会員制データベース) ― 「東方線上」と韓国のネットリサーチ会社「macromillembrain」の協力で、迅速かつ効率的なパネル調査サービスを提供
(3)東方社群研究 ― ネット上のさまざまなコミュニティにおける意見・口コミ調査における研究・分析
(4)上海東方線上(上海支社) ― 中国における消費者行動の定量・定性的研究およびライフスタイルのトレンド研究

 加えて、EOLは現在3つの研究センター(1:消費者ライフスタイル研究センター、2:データ融合研究センター、3:中国主要12大都市のミクロトレンド研究センター)を持っています。これらの研究センターを通じて、グループ全体の情報を融合・分析、常にアップデートしています。

 私の主な専門は台湾・中国市場のマーケティングやブランド管理です。私は1995年から約5年間、日本の東急グループの研究員でした。日本の経済・産業や消費者の意識・行動などビジネスを取り巻く環境の基礎研究をしました。現在は台日文化経済協会の監事と台日産業技術合作促進会の理事を務めています。

東急の研究員時代に私はQPRに出会いました

 ――日本での経験も豊富と聞いています。日本で記憶に残る思い出は何かありますか。

東方線上股份有限公司 執行長 蔡 鴻賢 氏

 蔡 私は東急の研究員時代にQPRに出会いました。QPRとは、1987年に(株)東急エージェンシーと(株)東急総合研究所が共同開発した日本で初めてのバーコードスキャナを用いた消費者購買動向データ分析のことを言います。POSデータのように、不特定の個人により買われた商品バーコードデータから集計するのではなく、「どのような人が」「何を」「どれだけ」「どのようなシーンで」商品を購入したかが購買行動データからわかり、さらに、消費者意識調査(購入者へのアンケート)により、「その商品をなぜ購入したのか」がわかります。一歩進んだPOSデータ分析の新しいモデルと言われています。食品、飲料、化粧品、生活用品など実際の購買データに基づく購入者像の把握、購買トレンドの分析に活用できます。

 私は当時若かったので、その本質を十分には理解できませんでした。しかし、台湾に戻って、自分のビジネスに応用することになって、その素晴らしさを実感しました。ビジネスとは離れますが、日本では全国の温泉「名湯」に旅し、大好きなラーメンも食べ歩きました。

台湾ではCPをとても重視する傾向にあります

 ――本題に入ります。EOL(東方線上消費者行動研究グループ)が年に1回発表する「E-ICP」(Eastern Integrated Consumer Profile)は知名度・適用範囲とも台湾髄一と言われています。2018年の傾向を教えていただけますか。

 蔡 E-ICPは1988年から実施している台湾のライフスタイルおよび消費者動向に関する調査です。2011年からは、シニア市場にフォーカスするため(台湾では日本同様に深刻な少子高齢化が進んでいる)対象を74歳に引き上げました。昨今、成長著しいECマーケットも視野に入れています。(有効サンプルは13歳~74歳の2,156名。調査は台湾全土で、2017年6月~8月に実施)

 その結果からわかったことは3つの点です。1つ目は、消費者はフェイスブック、ライン、YouTube、Twitterなどのソーシャルメディアの影響を強く受けていることです。2つ目は、台湾の消費者は、低価格で付加価値の高いものを強く好むということです。台湾ではコストパフォーマンス(CP)をとても重視する傾向にあります。我々の調査では、日本でCPを追求する人の割合は23%ですが、台湾では56%の人がCPを追求しています。逆に、生活に多様性を求める割合は、日本が61%に対し、台湾は26.5%でした。3つ目は、台湾でも、オンラインショッピングとリアルショッピングが融合して、その境がなくなっています。

 山本幸男氏 CPについては現在の台湾人の特徴の1つだと私も感じています。ラーメンを1つ食べるにしても、日本人からすれば、こだわりすぎるのではないかと思うぐらいCPを気にします。日本では、創造性欲求を満足させる商品や楽しさや面白さを求める商品がすごく発達していますが、台湾人はその点に関する関心は小さいと思っています。

(つづく)
【金木 亮憲】

 
(後)

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