昨今M&A事情(6)~リクルートホールディングス(後)
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インディードの売上は、買収後22.7倍
リクルートHDの2018年3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益は前期比11.9%増の2兆1,733億円、本業の儲けを示す営業利益は同0.9%減の1,917億円、当期純利益は同11.0%増の1,516億円だった。
売上収益は主力の人材派遣事業や求人情報サイトの収入が伸びた。営業利益は前の期は子会社の株式売却益として219億円を計上していたため反動が出て減益。純利益は米国の法人減税などに伴って法人取得税費用が減少したことから利益を押し上げ増益となった。
リクルートHDのビジネスは、HRテクノロジーとメディア&ソリューション、人材派遣の3つのセグメントで構成される。HRテクノロジーとは、インディードを主軸に人材採用領域におけるグローバルでのオンラインHR(Human Resource)事業。メディア&ソリューションは、販売促進、人材採用支援の事業をいう。
同社はセグメント利益をEBITDAで表示している。EBITDAは、本業の儲けである営業利益に減価償却費を加えることで、どの程度のキャッシュフローを生み出したか示す数値。3つのセグメントを見てみよう。
人材派遣事業。売上収益は前期比10.9%増の1兆2,988億円、EBITDAは同10.8%増の727億円。全社の売上収益の6割を占める主力事業だ
メディア&ソリューションは、売上収益は同3.3%増の6,799億円、EBITDAは同3.1%増の1,561億円。創業事業である同部門は全社のEBITDAの6割を叩き出す稼ぎ頭だ。
それでは、インディードのHRテクノロジーはどうか。売上収益は同64.7%増の2,185億円、EBITDAは同83.3%増の306億円。驚異的な伸び率を遂げている。
インディードの売上高(ドルベース)は、買収前は8,700万ドルだった。18年3月期には19億7,600万ドルと22.7倍だ。世界では月間2億人以上が利用する世界最大の求人情報サイトに急成長した。「人材業界のGoogle」と呼ばれる所以だ。リクルートHDは金鉱を掘り当てたのである。人材会社として世界一を目指す
リクルートHDは5月9日、求人関連の口コミサイトを運営する米グラスドア(カリフォルニア州)を12億ドル(約1,300億円)で買収すると発表した。これにより、リクルートHDが2010年以降に海外M&A(合併・買収)に投じた金額は計5,800億円に達する。
開示資料によると、グラスドア社は07年の設立。77万社を超える企業の口コミ情報をもつ。会社の従業員や面接を受けた人の口コミを集め、新たに仕事を探す人が参考にするサイトを運営。北米を中心に毎月5,900万人が利用している。求人情報の検索サイト、インディードと組み合せて、求職者や企業の希望に合った人材マッチングにつなげたい考えだ。
リクルートHDは19年3月期の売上収益は前期比5.9%増の2兆3,020億円、EBITDAは同10.3%増の2,850億円を見込んでいる。インディードが好調のほか、グラスドア社の子会社化を織り込んだ。
故江副浩正氏によって1960年にスタートしたリクルートは就職情報誌、結婚情報誌、住宅情報誌で事業を拡大した。現在のメディア&ソリューション部門だ。創業事業である紙媒体の減少で人材派遣事業に進出した。そして、HRテックと呼ばれる人材活用の領域にクラウドや人工知能(AI)など新しい技術を融合した付加価値の高いサービスを第3の柱に据えた。インディードとグラスドア社の買収によるHRテクノロジーの強化で、2030年に人材会社として「世界一」を目指す。そのカギを握っているのが、「人材業界のGoogle」といわれるインディードなのだ。
(了)
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