築地市場の仲卸業者が東京都を提訴!(前)~豊洲市場に建築法令違反
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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
豊洲市場の建築基準関係規定違反に関して6月6日に寄稿した(【特別寄稿】豊洲市場の建築基準関係規定違反は時間の経過で適法になるのか!)記事は、想像以上の反響があり、多くのメッセージもいただき、豊洲市場に対する関心の高さを改めて実感した。自らの生活に直結した問題だが、当事者である築地市場の仲卸業者には、それぞれの事情や商売上の力関係などから、自らの意思に反した選択を強要されている業者もいる。そのようななか6月29日、豊洲への市場移転に反対している仲卸業者が、東京都を相手取り、豊洲市場水産仲卸売場棟の建物の使用禁止と除却を義務付ける訴訟を起こした。
大阪府北部地震のブロック塀倒壊の悲劇が全国に波紋
6月18日、週始めの通勤通学の時間帯に、大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震が発生し、不幸にも5人の方がなくなった。なかでも、ブロック塀が倒壊し児童が犠牲になったことは痛ましい限りであり、心からご冥福をお祈りしたい。
建築法令に違反したブロック塀の倒壊は、全国の自治体が緊急調査を開始するなど、大きな波紋を呼んでいる。報道などで耳にされた方も多いと思うが、コンクリートブロック塀の高さ、厚み、配筋、控え壁などについては、建築基準法施行令第62条の8に規定されている。映像でも明らかなように、施行令の規定がまったく守られていない実態を放置していた小学校の所有者であり行政庁である高槻市の責任は重大だ。
大阪府北部地震で大きな問題となったコンクリートブロック塀の建築基準法施行令違反。実は、東京都の豊洲市場の建物(水産仲卸売場も同じく、建築基準法施行令を始めとする関係規定に違反した設計となっており、是正が必要である。前回の特別寄稿でも説明しているが、改めて要点を示す。
(1)保有水平耐力計算におけるDs値(構造特性係数)の偽装
(2)柱脚の鉄量が必要鉄量の規定を満足していない(鉄量が44%不足)
(3)層間変形角が建築基準法施行令第82条の2に違反以上3点に関する私の指摘に対して、東京都建築指導課は、「建築確認の審査においては、『建築基準法』だけをチェックし、それ以外についてはチェックしていない」とコメントしている。つまり、東京都の建築確認においては、「建築基準法以外の法令(ブロック塀の規定などの建築基準法施行令など)や告示(抽象的な建築基準法を具体的に補足する)はノーチェック」と、東京都建築指導課がコメントしているのである。私は40年以上建築に携わっているが、こんな乱暴な行政のコメントは聞いたことがないし、もちろん、建築確認の実態と大きく乖離している。
前述したブロック塀の場合、ブロック塀の高さ、厚み、配筋、控え壁などについて規定しているのは、建築基準法施行令第62 条の8であり、建築基準法というのは、実効性が担保されるように、施行令など関係諸法令の詳細な定めと一体となって成り立っている。
東京都建築指導課のコメントを容認すれば、ブロック塀についても「施行令などチェックしなくても問題ない」「危険なブロック塀があっても施行令に違反しているだけであり、建築基準法に不適合というわけではない」という暴論が罷り通ることになる。
東京都は、大阪府北部地震後、学校のブロック塀の点検を開始しているので、先の建築指導課のコメントは、都の方針と矛盾している。建築基準法第1条は、その目的を以下のように定めている。
「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」
東京都建築指導課が、人命軽視の主張をするのは、建築基準法の根本目的を知らないか否定しているかのどちらかということになる。
豊洲市場の法令違反を招いた業界と行政の馴れ合い
建築基準関係規定に違反する豊洲市場の設計を担当した日建設計(国内最大手の設計事務所)は、市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)の席上でも、設計の違法性を認めず、東京都の味方で占められたPTでの説明という形式的な儀式を終えている。
前回の特別寄稿でも紹介したが、建築構造専門家の団体代表としてPTに出席した(一財)日本建築構造技術者協会(JSCA)の森高英夫会長は、日建設計の設計について「通常の建物よりもワンランク上の耐震安全性が確保されていると私は判断した」と擁護しているが、日建設計の代表としてPTに出席した常木康弘氏は、JSCAの副会長であり、森高会長との関係が深いことが窺い知れる。同じ団体の会長と副会長が、質問→説明→肯定という茶番を演じていたのである。
かつて私もJSCAの会員であったが、構造計算書を検証することもできず「ワンランク上の耐震安全性が確保されている」などと身内を庇う会長と、それに甘んじる国内最大手設計事務所所属の副会長という茶番の構図は、建築業界(大手設計事務所・大手ゼネコン)と行政の馴れ合いそのものである。こんな馴れ合い団体に会費を払っていたとは、1人の技術者として何とも悔しい限りである。
また、日建設計は全国の公共建築物の設計に関わっている。豊洲市場の設計の場合と同じ思想により設計が行われてきた可能性が極めて高いと考えられるので、全国で日建設計が関与した物件の緊急点検を行うべきである。これは、コンクリートブロック塀と同様、緊急に実施すべきである。
東京都を提訴した訴訟と別に、市場関係者が日建設計を刑事告訴する準備を進めているとも聞いている。違法建築物を設計しておきながら、根拠をもった説明もせず、行政との馴れ合いでやり過ごした日建設計に対して、当事者である市場関係者が刑事責任を追及することは、当然のことであり、日本の建築界の未来のためにも、東京地検の捜査に期待をする。
(つづく)
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