2024年11月23日( 土 )

築地市場の仲卸業者が東京都を提訴!(後)~豊洲市場に建築法令違反

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

ブロック塀も、豊洲市場も、建築基準関係規定違反!

東京の食を守ってきた築地市場

 豊洲市場における建築基準関係規定違反と、大阪の地震で明らかになったコンクリートブロック塀の建築基準法施行令違反は、是正措置が講じられない限り適法とならない点において、まったく同じ違法状態である。

 高槻市の小学校のブロック塀の危険性については、3年前に専門家が指摘をしており、小学校から高槻市教育委員会にも報告されていた。しかし、何ら対策を行わず放置していたことが今回の悲劇の原因であり、これは【人災】である。一昨年の熊本地震でもブロック塀の倒壊により亡くなられた犠牲者の遺族が、ブロック塀の所有者に対して6,789万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こしており、今月20日に第1回目の口頭弁論が行われた。

 豊洲市場が建築基準関係規定に違反していることについて、私は、一昨年11月からマスコミを通じて警鐘を鳴らし、昨年2月以降、小池東京都知事や日建設計に質問の書面を何回も送付した。小池東京都知事や日建設計から何ら回答がなかったので、昨年11月には、(協)建築構造調査機構として、東京都に是正措置を求め提訴した(訴状受理の4カ月後、東京地裁は「当事者適格がない」と訴えを却下)。

 高槻市と同様、東京都は、豊洲市場が建築基準関係規定に違反していることを知っているのである。東京都市場整備課はマスコミの取材に対し、「仲盛氏の指摘は把握しており・・・」と回答していることからも、東京都が私の指摘を認識していることは明らかである。

 築地市場の仲卸業者が提訴に踏み切ったことにより、築地市場内の移転反対派と移転推進派の対立が激化することは間違いない。移転推進派は、これ以上移転が延期されることによる経済的損失に関して東京都を糾弾するであろうし、東京都も何らかの方向性を示すと思われるので、裁判の審理のなかで、原告が、都が示す方向性の法的根拠を追求していくこともあると思う。

 全国の行政庁が、ブロック塀の緊急点検と是正を実施しているように、建築基準関係規定違反の豊洲市場の施設について、東京都は、早急に是正措置を講じるべきである。大阪府北部地震のブロック塀のように、犠牲者が出てからでは遅いのである。

首都圏で大地震が発生すれば、市場機能が停止!

 大阪府北部地震が発生する直前には、千葉県で地震が頻発し、群馬県で震度5弱の地震も発生しており、首都圏が大地震に見舞われる確率は高まっている。

 6月26日、政府の地震調査委員会から、今後30年以内に震度6弱以上の大地震に遭う確率を示す「全国地震動予測地図(2018年版)」(下画像)が公表された。この調査は、日本周辺の海溝や内陸の活断層で起こる大地震について、18年1月1日時点の評価を基にした調査である。

(画像)今後30年間に震度6弱以上の大地震が起きる確率(国立研究開発法人「防災科学技術研究所」

 下の地図に紫色で示された地域は、「今後30年間に震度6弱以上の大地震の発生確率が26%~100%と想定される地域」である。近年、発生確率が高いと注意喚起されている首都直下地震や南海トラフ地震の影響を受ける太平洋側の大部分が紫色となっており、大地震発生が現実味を帯びてきている。

 首都圏で確率が高い県庁所在地として、千葉市が85%、横浜市が82%となっており、東京都は48%となっている。
 この調査は2018年1月1日時点の評価を基にした調査なので、今年6月18日に大阪で発生した震度6弱の地震は考慮されていない。調査で大阪市での発生が想定される確率は56%となっており、東京都の確率48%との差は少ない。千葉市や横浜市での確率が80%を超えていることを考えれば、首都圏で震度6弱以上の大地震が発生する確率は極めて高いといえる。

 東日本大震災後、国は、国土強靭化計画を打ち出し、老朽化した首都高速道路などのインフラ整備や、災害時に緊急自動車の侵入が困難な住宅密集地の解消などを進める計画であったが、東京五輪を2年後に控えた現在まで、ほとんど進んでいない。

 豊洲市場に関して、建築構造上の問題が、市場問題PTにおいて取り上げられはしたが、問題を指摘する側の専門家の意見や主張が封じ込められた様子がPTの議事録で明らかなように、PTは、東京都が決めたスケジュールを優先するために、「専門家により諸問題を検討して解決済み」という儀式に過ぎない。時間がある方は、ぜひ、PTの議事録を見ていただきたい。

・市場問題プロジェクトチーム

 首都圏で大地震が発生すれば、建築基準関係規定に違反した状態である豊洲市場の建物には、甚大な被害が発生することが予測される。人的被害も免れることはできないだろう。仮に人的被害がなかったとしても、建物の損傷で市場機能が失われる。都民や飲食関係者への食材の供給がストップし、パニックを引き起こす。

 また、全国から農水産物が集まる東京中央卸売市場の機能が停止すれば、その影響は東京都だけにとどまらず全国に波及する。市場関係者だけでなく、全国の生産者の仕事と生活が奪われる。このような事態になれば、東京都は危険性をともなう違法状態を放置していた責任を問われることになる。

 東京都知事や職員が、本気で、都民や市場関係者の生命や生活よりも東京都の面子や責任回避が重要だと考えているのであれば、直ちに、その考えを都民に示して、審判を仰ぐべきである。

 私は、東京都知事や職員の良心を信じている。まず、豊洲市場の移転をいったん止めて、建築基準関係規定に適合するよう是正措置を講じることを優先してほしいと願う。移転を強行して、地震による被害が発生してからでは遅いのである。被害が発生すれば【人災】である。大阪の悲惨な犠牲を無にしてはいけないと思うのは私だけではないと思う。

 今回、築地市場関係者が提訴に踏み切ったことにより、裁判の結果や経緯が、移転反対派にとっても、移転推進派にとっても、将来発生する東京都の責任を追及するために重大な意味をもつものとなるであろう。

(了)

 
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