2024年11月05日( 火 )

福岡建設業界に衝撃 西中洲樋口建設「廃業届」提出の顛末(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)西中洲樋口建設

 「西中洲樋口建設が廃業届を提出した」―6月22日、建設業界関係者に瞬く間に広まったこの短いニュースの本当の意味を、理解できた者がどれだけいただろうか。福岡市の大型公共工事を手がけることで成長を続けていた西中洲樋口建設は、ある意味で「福岡建設業界のアンタッチャブル」として知られていた。その西中洲樋口建設がなぜ廃業届を出さざるをえないまでに「追い詰められた」のか。建設業界を騒然とさせた廃業届の背景を探った。

西中洲樋口建設を支える2つの「力」

(株)西中洲樋口建設 本社外観

 西中洲樋口建設(以下、西中洲樋口)は1968年4月、社名の由来にもなる福岡市中央区西中洲で樋口義実氏によって創業。当時の屋号は「樋口木材」で、69年11月に現商号に変更し、娘婿の樋口征男氏(以下、樋口氏)が福岡市を代表する建設業者に育て上げた。

 2001年9月、横尾博氏が代表取締役に就任し、樋口氏は会長職に就いている。横尾氏と樋口氏は、西中洲樋口がまだ樋口木材だった頃からの仲だという。2人でトラックに乗り込んで現場を回る日々。苦楽をともにしながら40年以上連れ添い、「相棒」ともいえる関係を築いていった。

取材班が情報公開請求で入手した、西中洲樋口建設の廃業届
※クリックで拡大

 同社はその後、関連会社の(株)博栄建設、大社建設(株)、(株)筑糸建設らとともに建築・解体工事を受注。さらに公共工事を受注するようになってからは一層、事業基盤を強固なものとした。公共工事への強さからしだいに存在感も高まり、大手ゼネコンですら「西中洲樋口に挨拶しなければ、受注できない」と一目置くほどの影響力をもつまでになった。

 最近では、JVの1社として福岡市総合体育館整備運営事業(契約額137億8,587万円)などの大型公共工事に参加している。市発注工事を中心に実績を築いた結果、市から4年連続で優良工事業者として表彰されるなど、その仕事自体は高く評価されてきた。

 同社が樋口氏の代で隆盛を極めることができた理由については、建設業者としての本業の実力以外に、西中洲樋口がもつ目に見えない2つの「実力」が関係していたとみるむきは多い。実力とはすなわち、「警察」力と政治力だ。

 実は樋口氏は福岡県警察OBで、樋口氏の長男は現役の県警幹部でもある。次男は、元福岡市長・山崎広太郎氏の秘書を務めた後、地場の設計会社を経て福岡県議会議員に当選。17年春から今年5月まで県議会議長も務めた大物県議だ。

※クリックで拡大

(つづく)
【特別取材班】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:樋口 征男
所在地:福岡市中央区西中洲12-13
設 立:1969年11月
資本金:8,800万円
売上高:(17/9)18億84万円

(2)

関連記事